Saturday, October 06, 2007

この場面で、この一球

メジャーリーグのプレーオフが始まりました。年間162試合もやってるメジャーリーガーが、シーズンの最後の最後にワールドチャンピオンを賭けて戦うというのは、大きな名誉であると同時に、肉体的にも精神的にも相当すり減ってる状態だと思われます。一方、見ている方は、このプロ中のプロたちが、一試合も負けられないというプレッシャーの中で戦うというのは、一球一球が本当に重みのある、非常に見ごたえのある試合だと言えるでしょう。現に、過去のプレーオフを思い返してみても、信じられないような凡ミスで試合が決まったり、流れが変わったりという場面があり、いかにプレーオフでのプレッシャーが大きいかということを物語っています。

昨日、10月5日はクリーブランドでヤンキースとインディアンズのディビジョンシリーズが行われました。初戦はすでにインディアンズが大勝しており、5回戦勝負のこのシリーズでは、ヤンキースはこの試合を落とすと、インディアンズにリーチがかかるというとても大切な試合。試合はヤンキースがホームランで1点をリードしたものの、8回の裏にワイルドピッチで同点に追いつかれます。ヤンキースは同点の状況で抑えの守護神、マリアーノ リベラを出し反撃を待つものの、打線は沈黙し続け延長11回へ。

11回の裏、ヤンキースのピッチャーはビスカイーノへ。先頭バッター、フォアボール。送りバントを続けて失敗して追い込んだ次のバッターにレフト前にヒットを打たれ、犠打、敬遠のフォアボールで、ワンアウト満塁。次のバッターを抑えるも、なおツーアウト満塁で、迎えたのは長距離砲、ハフナー。カウント、ツースリーからライトへヒットを打ち、インディアンズが延長戦を制する。

さて、野球の解説的にも、いろいろ話題が豊富なこの場面ですが、とりあえずメンタル的な話をひとつ。

負けたら相手にリーチがかかる、プレーオフ2戦目の11回の裏。
同点。
ランナー満塁。
打席には3番打者。
フルカウント。

さて、この場面で、投げる球はどんな球ですか?
そしてなぜその球を選んだんですか?
その球を、どれだけ練習してきましたか?
そして、その球をこの場面でどれだけ自信を持って投げられますか?

この場面を迎えた選手として、選手を送り出すコーチとして、心のよりどころになるのは何でしょうか?運にも左右されるでしょうが、この場面祈るだけでは、あまりにも頼りないですよね。では、何でしょうか?やはりそれは日々の積み重ねです。日々、何を(What)どのように(How)どれだけ(How much)してきたか、というのがモノを言うのが、こういう場面です。

メンタルトレーニングのアプローチというのはいろいろありますが、その中でも大きな1つが、練習(トレーニング)の質の向上にあります。アスリートにとって毎日の練習、トレーニングというの欠かせませんし、その質、量というのは何よりも大切なものです。もちろん、試合の一場面においての一球というのは、相手打者との駆け引きや、試合の展開などで、配球はいろいろ変わってくるのですが、大事な場面を任される投手として、日々の練習の中で、「この場面での一球」を投げる準備というのは大切でしょう。

自分が一番自信を持てる球種は何か?
それをどのコースに投げるのか?
その球種を狙ったコースに10球中、何球投げられるか?(20球中では?30球中では?)
それを勝負のかかった場面を想定しても、同じような確率で投げられるか?
ブルペンでバッターを立たせても同じように投げられるか?
試合形式は?
オープン戦では?

これらの問いに答えていく中で、もちろん技術的な課題も出てくるでしょうし、それを5イニング目だろうが9イニング目だろうが投げられるような体力的な課題も出てくるかもしれません。では、心理的な課題はどうでしょうか?

マウンド上で投球準備の際に行うアプローチはありますか?
プレッシャーがかかる場面で、気持ちを落ち着けるアプローチはありますか?
それは肉体的な緊張をほぐすものですか?
感情や思考を落ち着けるものですか?
両方かもしれません。
もしくは何か自分を鼓舞するためのアプローチはありますか?



さて、みなさんは毎日の練習でどれだけ試合への準備が出来ていますか?

2 comments:

Anonymous said...

ずっと、コメントを書こうと思いつつ、11月になってしまいました。


>>プレッシャーがかかる場面で、気持ちを落ち着けるアプローチはありますか?



私の場合、自分がアスリート時代、これが上手くできてませんでした。所謂、プレッシャーに弱い選手で。今、なんでそうだったのか考えると、私はとても失敗するのを怖がっていて、失敗=負けること、自分を他の選手と比べて自信をなくしてたり…だめだめな心理状態のオンパレードです(笑)

スポーツの第一線から離れた今も、普段の生活でこういう場面に遭遇しますよね。昔と違うのは、自分がコントロールできることに集中しようと努力できるようになったことかな。例えば、プレゼンのときは観客(?)の反応を怖がるんじゃなくて、自分ができること、(はっきり、ゆっくり話す、とか)に集中する。そしたら、私の場合、だいぶ気持ちが落ち着きます。大きい場面だけじゃなくて、常にこれは意識してることのひとつかな。


コントロールできること VS コントロールできないこと、はメンタルトレーニングのキーですよね。そしてコレは自分も実践して、本当にいけるな、と思ったもののひとつです。

said...

>萌ちゃん
いやいや、コメントありがとね。

アスリートとして、結果を意識するというのは、当然のことで、みんないい結果を得るために毎日毎日、一生懸命練習しているんだからね。だけど、試合中に何にフォーカスするべきか、というのは、また別の話だよね。自分がコントロール出来るものは何か、セルフコントロールは何かというのを学んで、それを練習から実践してみる、反復練習を経て、試合に臨む、課題を見つけて、また練習、という形で、だんたん試合におけるセルフコントロールを学んでいけるんじゃないかと思う。

今、個人的に、中学生、高校生の野球の練習を手伝っているんだけど、例えばバッティング練習で、最初は20球くらい普通に投げてあげて、彼らに打たせてあげる。で、次のセットで、「じゃあ、試合の一打席と同じようにカウント0−0から始めよう」って言って、試合と同じように打ったらそれでおしまいって状況で、彼らに打たせてあげると、前と同じように投げても、途端に精度が落ちる。そこで、打席に入る前にいかに準備しなければいけないか、ということを教えてあげる。ピッチャーを観察して、どういう球が来て、どんなふうにタイミングを取って、どうやって打てばいいか、すべて頭の中でイメージしてから、打席においで、と言った感じで。すると、彼らの精度が少し良くなる。そこで、それがいつ、どんな状況でもバッターとしてしておかなければいけない「準備」なんだよ、と一言コメントする。彼らがそれで、この練習で学んだアプローチを試合で実行出来れば、立派なメンタルトレーニングとして使えるよね。こうやって試合に向けて、メンタルのアプローチを日々の練習で活用出来れば、理想だなって思います。

メンタルトレーニングが日常生活にも活かせるというのも、同意。自分の場合も、学校の課題で、締め切りが迫っててテンパってる時とか、「今一番大切な事は何か?」「今、ここで何をやらなければいけないか」とか自問自答して、自分を落ち着けたりします。

プレッシャーがかかっている「場面」というのは変わらないけど、自分のアプローチは変えられる。自分が変われば、パフォーマンスも変えられる。メンタルって面白いよね。