Friday, May 30, 2008

Quality of Practice バッティング続編

Quality of Practice第三弾

今まで、いろいろと日々の練習にメンタルトレーニングを取り入れる方法を紹介してきましたが、今回はその続編。日頃、一生懸命練習している野球少年たちですが、彼らもまだ中学生、高校生。ということで、少し、遊び感覚を取り入れつつ、実践への応用も学べるという練習を取り入れています。

バッティング練習を2−3セットした後に、試合形式のバッティングを必ず取り入れます。先週の日曜日は、2人に最終回、ノーアウト満塁、得点は3点ビハインド、つまり3点取らなければ負けるという場面。2人が交互に打席に入って、3打席ずつ立てるというルール。つまり、6打席で目標3点という状況を設定。

最初は、
「え〜、無理です」
という反応。
「何でだよ、ノーアウト満塁だよ。で、6打席で3点だぜ」
と返す。
「でも、ゲッツーとかあるから。。。」
とどこまでもネガティブな発想。
「何てネガティブな!最終回にノーアウト満塁って言ったら、追いつめられてるのは相手だぞ。こっちはイケイケで、点とるだけじゃないか!!」
と一蹴。

試合形式のバッティングをすると、彼らの顔つきが全然違う。それまでの練習と同じ距離から、同じ速さのボールを投げても、かかるプレッシャーが違う。これこそ、この練習の目的。つまり、

  • 自分の精神状態はどうだったか?
  • 準備(routine)はしっかり出来たか?
  • 結果は?
  • 成功したとしたら、何がよかったのか?
  • 成功しなかったとしたら、なぜか?何が次回への課題か?
こういったことが、この試合形式の練習で学ぶことが出来ます。

こういった練習では、その場の打った、打たないで一喜一憂するのは、もちろんいいことなんだけど、しっかりプロセスの分析、次回への課題設定を行うことが大切です。

結局、この日は、1打席目でY君がレフト前ヒットを打ち、一気に勢いがついて、T君もヒットで続き、あっという間に2点。2打席目も2人でヒットが1本出て、あっさり目標達成。3打席目は、こちらも「そうは簡単に打たせるか」とちょっとムキになって、しっかり抑えました 笑

3打席、終えたところで、恒例のミーティング。何せ3人だけの練習なので、必ず1つの練習が終わったら彼らの感覚や、感想を逐一確認するようにしています。ちょこっと彼らも口頭で感想を述べましたが、今回は、この3打席の間の細かい心理状態を来週までに書いてくるように、と宿題を出しました。彼らがどんなこと書いてくるのか、こちらも楽しみですが、想像するに、最終回、3点差で負けていて、ノーアウト満塁。最初は緊張していた彼らも、点差が詰まるにつれて、「イケるんじゃないか」となったと思われます。で、最後はこちらが本気になったのを見て、「こりゃ、ヤバい」とまたネガティブになってしまった。人間の心理の何て面白いことか。「ノーアウト満塁での打席」という状況は変わらないのに、1点、また1点と、点差が縮んできたことで、心理状態はポジティブに変わり、同点までこぎつけて、状況としては押せ押せなのに、相手投手が本気になってのを見て、また不安が襲う。短期間の間に、ちょっとしたことで、これだけ人間の心理というのは変化するものなんですね。

来週、彼らの持ってくる宿題を見て、ミーティングをして、また練習を組み立てようと思います。

Thursday, May 29, 2008

Quality of Practice バッティング編

さて、前回に続いてQuality of Practiceの話で、今回はバッティング練習編です。ここでもキーワードは準備です。

試合の状況を想定してバッティング練習を行うわけですが、実際、試合でボールを打つまでのプロセスを思いおこしてみます。ベンチから、ネクストバッターズサークルに向かいます。ストレッチをしたり、バットを振ったりして、体を温めて、前の打者に続いて、バッターボックスに入るわけです。中にはピッチャーを観察してタイミングをとっている選手もいるでしょう。

ピッチャーが18m先から140キロの球を投げた場合、ボールがピッチャーの手を離れてから、ホームベースに届くまでに要する時間は、わずかコンマ数秒。つまり、一旦、ピッチャーが振りかぶったらバッターには考える時間などありません。そんな一瞬の勝負を迎えて、バッターが出来る準備とはどんなことでしょうか?自分がこれから対戦するピッチャーがどんなピッチャーで、どんな球を投げて、自分はどのように打つのか。つまり、これから対戦するピッチャーのことをより理解していて、自分がどのように対応するかをなるべく鮮明にシミュレーション出来ている、というのが、試合で打席に入る際に望ましい準備と言えるでしょう。

実際、打席に入ってから、ピッチャーの球を目にして、タイミングを計って、という選手もいるかもしれませんが、打席を振り返ってみたら、見送った初球が唯一甘い球だったなんてことも充分にありえます。何より、初球というのはピッチャーも手探りだったりするわけで、バッターにとってはピッチャーを攻略するチャンスでもあります。なので、バッターとしては初球からベストスイングが出来るだけの準備をしておくのが望ましいでしょう。

さて、ネクストバッターズサークルでの時間を少しでも有意義にするためには、体を温めるだけというのでは、もったいなさすぎます。ネクストでは、これから対戦するピッチャーを観察するのに絶好の機会。まずピッチャーのモーション、球筋(ストレート、変化球ともに)を観察し、出来る限り鮮明にイメージします。出来る限りというのは、実際、打席で自分が目にするアングルで、18m先にピッチャーの姿を思い浮かべて、ピッチャーがモーションを開始して、白いボールが自分に向かってくるところまでイメージするということです。

次に、自分がピッチャーのモーションに合わせて、タイミングをとって、バットを振り出して、実際に、ジャストミートするというところまで、しっかりイメージしてみます。それが、まさしく、自分が数分後に打席で行いたいパフォーンマンスになるわけです。ストレートには、どういうタイミングでバットを出して、カーブやスライダーにはどのように反応するのか。相手投手については、すでにビデオで研究済みかもしれませんし、以前に対戦したことがあってだいたいわかっているかもしれません。しかし、ここで、今一度自分の頭の中で、自分が今まさにこのピッチャーから打つために、より鮮明なイメージを頭の中で思い浮かべてみるわけです。それが、コンマ数秒の間に行われるパフォーマンスを成功させる可能性を高めてくれるわけです。

さて、ここでの野球教室でも、毎回このプロセスをルーティン(routine)として行っています。バッティング練習で投げてるのはいつも自分ですが、その日によって調子が違うので、球筋も違うかもしれません。彼らも、その日によって調子が違うので、ボールの見え方などが変わってくるかもしれません。何よりも、常にパフォーマンスを行うためのメンタル的な準備として、毎回このルーティン(routine)を行っています。こうして、毎回毎回バッティング練習のたびに、これらの準備を行うことで、それが試合で自然と毎打席行う習慣になればしめたものです。相手が誰であれ、どんな状況であれ、自分が今ここでするべき準備というのは変わらないのです。自分なりのチェック項目をこのルーティン(routine)に組み込むことで、自分が今ここでやるべきことを認識出来ますし、ルーティン(routine)に没頭することで、集中力も高まります。こうして、ルーティン(routine)によって準備を一定させることで、パフォーマンスを安定させる可能性を高めることが出来るわけです。

こうして、前回と同じく、メンタルトレーニングを練習の現場に持ち込んで、繰り返し練習し、試合で実行する、という図式をつくることが出来ます。それが、まさに試合のための練習と呼べるものです。もし、試合でこのプロセスがうまく出来なかったら、また練習から始めればいいわけです。常に試合に向けての練習をし、試合は練習の成果を試す機会と捉え、試合で出来なかったことをまた練習に持ち帰って修正する、という試合と練習のいい相互関係を築くことが出来ます。

さて、次回はちょっと遊びを取り入れたバッティング練習を紹介します。

Tuesday, May 27, 2008

Quality of Practice

さて、早速更新。

ここテネシーでは大学院で勉強している傍ら、毎週日曜日、隣町の日本人の野球少年たちの練習を手伝いに行っています。現地の学校に通う高校1年生(こちらでいう9年生)と中学1年生(同じく7年生)で2人とも毎週日曜日に熱心に自主練をしているので、何とか彼がうまくなれたらいいなと思って、練習の手伝いをさせてもらってます。

さて自分の役目はというと、野球の技術を教えてあげるのはもちろんだけど、自分の専門でもあるスポーツ心理学の要素をさりげなく、練習メニューに組み込んでいます。メンタルトレーニングというと、何やら、椅子に座って目をつぶってイメージトレーニングをやったりとか、寝転がってリラクセーションをしたりというイメージがあるかもしれませんが、アスリートにとって、一番の関心事はパフォーマンスを向上させること試合で練習の成果を発揮させること。そのためには、何が大切かというと、当たり前の話ですが、日々の練習に他ならないわけです。充分な練習時間を確保するのはもちろんのこと、練習の質(Quality of Practice)にこだわることが大切です。そして、試合には「自分はこれだけやったから大丈夫」と自信を持って臨めることが、試合において望ましい精神状態と言えるわけです。高校生くらいになればどの選手も、毎日練習をしてます。でも、試合においてどこで差が出るかというのは、毎日の練習の仕方で、差が出てくるわけです。

ちなみに、先週の日曜日に彼らが行った練習内容です。

  • キャッチボール
  • ノック(守備練習)
  • バッティング練習
    • 5mくらいから軽くトスしたボールを打つ練習
    • マウンドから投げたボールを打つ練習
    • 試合形式


まあ、どこの野球選手もやる一般的な練習ですが、ここでは少しこれらも工夫しています。例えばキャッチボールの後半では、タッチの練習をします。普通キャッチボールでは、相手の胸に投げろと教わりますが、それは試合では常に当てはまるわけではありません。タッチプレーでは、より相手がタッチしやすい位置、つまり相手の膝の高さあたりに投げるのがベストなわけです。ボールを受ける方は、半身になって、ボールを捕ってそのままグラブを下に落としたら、ちょうどランナーがベースにスライディングしてくる位置でボールを捕るようにします。手を伸ばして捕ったら、タッチのために手を動かさなきゃいけない分、時間のロスになります。このほんのコンマ数秒にこだわることもQuality of Practiceの向上になるわけです。

ノックも一通り、基本プレーをした後は、試合の場面を設定します。最終回、同点でワンアウト満塁、または、ランナー三塁。ホームベースでタッチプレーかフォースプレーかという、どちらにしても、野手としては自分のプレーで試合が決まってしまうという最もプレッシャーがかかる場面です。ゴロを捕ってキャッチャーの正面に投げれば、もちろん合格点。でも、よりよいプレーを目指すのであれば、タッチプレーの時には、先ほどのタッチの練習の時のように、キャッチャーの左の膝元に、そして、フォースプレーであれば、ホーム→一塁のダブルプレーが狙えるのであれば、キャッチャーが捕った後、一塁に投げやすいように、キャッチャーの胸に。ホームでアウトを一個捕るだけであれば、キャッチャーが一番体を伸ばして捕れる位置である、ベルト付近に投げるのがベストです。

実際の試合でプレッシャーがかかるこのような場面で、一瞬のプレーを成功させるためには、それ相応の練習が必要です。まず、この練習では、

(1)しっかり状況を把握すること
  • この場面、どこに投げるのが最優先か? → ホームベース
  • 守備位置はどこか? → 前進または中間(アウトカウント、ランナーの位置、打者によって変わる)
(2)完成させたいプレーは?
  • キャッチャーのどこに投げるのか? → タッチプレーかフォースプレーかを確認
  • 投げる位置は状況によってどう変わるか? → 打球の強さ、捕球した体勢などによって
練習では一回一回、状況を少しずつ変えて、その都度彼らに、こちらから質問をして、確認させます。で、プレーの後に必要であれば、状況判断が正しかったか、正しい位置にボールが投げられたかなどのフィードバックを与えます。そして、一番強調するべきことは、これらのことは、試合において、全ての状況で、自分が守っている時に、ピッチャーが投げる前に行うべき準備なわけです。つまり、プレッシャーがかかる場面で、このような準備を周到に行うことで、自分が今、ここでやるべきことを確認し、それに集中することによって、余計なことに神経を使う余地がなくなるわけです(エラーをしたらどうしよう、とか)。さらにメンタル的なことを付け加えるとしたら、(1)の状況判断をしっかり他の野手に声を出して確認すること(チームプレー)、(2)の完成させたいプレーを実際自分が、成功させているイメージを瞬時に行うこと(イメージトレーニング)で、さらに他の選手や、自分自身の集中力を高めたり、自信を持って次の瞬間に臨むことが出来ます。ただ、繰り返しになりますが、こういったことをいかに日々の練習でやっておくかが、試合の一瞬のプレーにおいて明暗を分ける差になります。

こうやって、メンタルトレーニングというものを日々の練習に取り入れていくことで、練習の質(Quality of Practice)の向上に役立つし、実際の試合で、練習の成果を発揮できる可能性を高めていくことになります。

バッティング練習については、また次回。

Monday, May 26, 2008

2008春

ご無沙汰です。

あれやこれやありましたが、2008年春学期も無事に終わりました。学期中はただでさえ余裕がなくなってしまう上に、今学期は体調を崩してしまったこともあり、ようやく終わってほっとしています。今学期を終了して、とりあえず無事卒業単位を取得することが出来ましたこれから先は、コンプリヘンシブ試験、博士論文に取り組むことになり、来年春の卒業を目指します。あまり実感はないのですが、一応は節目を迎えたということで、とりあえずブログにて報告。そして、これをきっかけに何とかブログの更新頻度をあげていきたい、と熱烈に思っています 笑。

実は、今までブログの更新が滞っていた理由のひとつに、知らず知らずのうちに、たいそうなことを書こうと力みすぎていたような気がするので、今後は少し力を抜いて、メンタルのこと、大学院生活のこと、なんかをつらつらと書いてみようかと思います。アメリカ生活のしょーもないアホな日記はミクシイの方でちょくちょく書いていくとして、こちらでは、もう少し日々考えていることや、メンタルのことなんかを更新出来たらいいかなと思います。

少し力を抜いて、といった矢先になんだけど、大学院生活もあと1年(予定)を残すだけとなり、この1年は環境的にも、心境的にもいろいろと動きが見られることが予想されます。まあ、そんな中、自分を鼓舞する意味でも、このブログを再開するのもいいかな、と思っています。頭は冷静に、でも、ハートは熱く、自分のゴールに向かって、走り抜きたいと思います。