Sunday, June 25, 2006

メンタルは万能か?

メンタルの重要性について書くはずのブログにのっけから懐疑的なタイトルで恐縮だが、少し考えてみてほしい。例えばスポーツで、相手とパフォーマンスを競う場面で、メンタルは大切なのはもちろんだが、勝負の結果は全てメンタルに起因するのか?「メンタルの差が出ました」とか「メンタルの弱さが原因です」というのは、敗者の弁としてよく耳にするフレーズである。では、果たして本当にそのコメントは的を得ているのか?

次に、以下の問いについて考えてみてほしい。「マイケルジョーダンはなぜメジャーリーガーになれなかったのか?」この問いに対して、彼は競争の激しいマイナーリーグを勝ち抜くだけの精神力がなかった、というのは適切な答えだろうか?間違いではないかもしれない。バスケットでは数々の場面で、強靭な精神力を見せた彼も野球においては、その精神力を発揮出来なかったという答えもある意味成り立つかもしれない。フィジカル面でも、パワーについては、野球選手としてどの程度だったかはよくわからないが、彼の運動能力は申し分なかったであろう。では、一番の原因は?それは、野球の技術が不十分だったから、であろう。まあ、彼は1シーズンしかプロ野球生活を送っていないので、結論を出すには無理がある議論ではあるのだが。

ここで自分が好きな著書の一つである「新インナーゲーム」(日刊スポーツ出版社)からプロゴルファーの青木功さんのコメントを引用したい。
『ゴルフはメンタルなスポーツだと言うが、賛成できかねる部分もある。だいたい、「心技体」というのは、自分は嘘だと思う。「イメージトレーニングのおかげで勝てました」などと発言する若手に限って、次の週からは元の木阿弥になることが多い。大事なのは、やっぱり体だ。重要な順番から言えば、「体技心」ではないかと思う。』
このコメントは誰もが抱いているゴルフというスポーツについてのイメージを覆すものかもしれないが、彼が言わんとしていることは、本当にプロゴルファーとして生き抜くためには、技術を身につけるのはもちろんのことだが、プロゴルファーはそれを1試合だけ出せばいいというものではなく、1年を通じて、しかもそれを毎シーズン出し続けなければいけない。安定して自分の技術を発揮するためには、それだけの反復練習をしなければいけないし、シーズン中のコンディションも整えなければいけない、ということから肉体的な強さが最初に来るべきだ、ということではないだろうか。

つまり先ほどのジョーダンの例や青木選手のコメントから言えるのは、パフォーマンスを競う場面において、メンタルが勝負を分けるというのは、あくまで技術や体力が互角である、または差があるとしても太刀打ちできるほどの差であるという場面においてだということである。そういった意味では、ごく最近の例を持ち出すとすれば、サッカー日本代表のワールドカップでの結果は、メンタルが原因とは言い切れないと思う。もちろん本来の実力を出し切れなかったことはメンタルに起因するものだとも言えなくはないけれど、日本代表の3試合と、他国の試合をざっと見比べた場合、90分間の運動量や、ボールのキープ力、パスの精度、などなどが決勝トーナメントに出るチームからは見劣りしてたのではないかと感じた(これに関してはサッカーに詳しい人からのコメントが欲しいところです)。

続いては、トリノオリンピックからスピードスケートの岡崎朋美選手の例。彼女は500Mで銅メダルに0.05秒足りずに4位に終わっている(500Mは2回のレースのタイムの合計で争われる)。これに対しての彼女のコメントが『1本目で4位の任慧のタイムを引き離した3位だったので、ちょっと守りに入っちゃったのかもしれない』『2本目で前の組に滑った任慧が38秒27を出しその時点でトップに躍り出たので意識してしまった』『2本目の最終コーナーの出口で、インコースを走っていた李が視界に入った瞬間にタイムを計算し「やばい、抜かれるかも」と思ったら焦りが出た。膝が立ってしまい、気持ちだけ先に行ってしまったんです』(Number 648)。これらのコメントから彼女の場合、0.05秒の明暗を分けたのはメンタルの差だったと言えるかもしれない。

さて、話を戻すと、パフォーマンスの出来不出来を競う勝負のかかった場面では、結果に対して選手や監督はおそらく一番インパクトのあった要素を持ち出してそれが勝因である、敗因であると言うものであろう。しかし実際は、パフォーマンスにおいては、心技体は常に切り離せないものである。「メンタルの強さ」(これに対する定義も人それぞれだと思うが)というのは勝負を分ける大切な要素であることは間違いないが、あくまで要素のひとつである。もちろん勝負のレベルによってメンタルが占める比重というのは変わってくるわけだが、自分のパフォーマンスを振り返る時は常にメンタルと同様に、フィジカル、技術も当然ながら、慎重に分析する必要がある。

Saturday, June 24, 2006

プロローグ

ブログ始めました。
何事もまずは経験。

スポーツ心理学を勉強し始めてから早3年が経とうとしています。
さて、今後も一生続けるであろうこの道について、これまで何を学んできて、それをどうやって人に伝えていって、さらにこれから何を学んでいくべきなのか、そんなことを自分自身問い続けながらやっていきたい、そんな思いからこのブログを始めました。なので、このブログは多くの人の参加を歓迎します。

知識は、身につけるだけでは半人前。それをより多くの人に伝えられるようになってこそ一人前だと思っています。学びながら教え、教えながら学ぶ。それが常に自分が心掛けていることです。

「メンタルが強いとはどういうことなのか?」「メンタルは本当に強くなるのか?」「そもそもメンタルとは何なのか?」メンタルに関する興味や疑問は尽きません。この、目に見えない、とらえどころのないものを考えていくことは時には難しく、時には人にフラストレーションを与える物かもしれません。「どうしたら自分はもっとタフになれるのか?」「どうしたら選手のモチベーションを上げられるのか?」などなど。でも、目に見えない、終わりのないものだからこそ、メンタルを追求することは魅力があって止められないものなんだと思います。

成功は、成功するまで挑戦を止めない人に訪れるものだと思います。メンタルの追求も奥が深いものです。でも、心の充実がもたらすものは、他のどんなものよりきっと魅力のあるものでしょう。

ま、おいおい話していきましょう。