- Goal orientation(目標の指向性)
- Task (Mastery) oriented goal
- Ego (Outcome) oriented goal
- Perceived competence(自分で認識している能力)
- High perceived competence
- Low perceived competence
- Achievement behavior(行動)
- Effort(努力)
- Persistence(忍耐力)
- Task choice(取り組む課題の選択)
パフォーマンス
Task orientedな選手は、自分が取り組んでいる課題や、自分の技術を伸ばすことにフォーカスしています。そのため、自己記録の更新や、自分の課題をクリアすることで達成感を感じます。自分の能力は変化するものだと捉えていて、成功は努力によってもたらされると考えています。達成したか否かというのは自分の中の基準(自己記録など)によって決まります。
一方で、Ego orientedな選手は自分が他者より優れているかどうか、ということにフォーカスしています。能力は生まれつき決まっていて、成功は持って生まれた能力によって決まると考えています。達成感は自分が他者より優っている、または、他者より少ない努力で同等の成果をあげた、と認識することによってもたらされます。
当然、Task orientedとEgo orientedの選手には行動に違いが出ます。例えば、Task orientedの選手は新しい技術や戦術を身につけることに関心を持っているので、より高いレベルの課題を選ぶ傾向にあります。能力は変化しうると捉えていて、かつ成功は努力によってもたらされると考えているので、目標達成のために努力を惜しまず、辛抱強く挑戦を続けます。このタイプの選手は、自分の課題をクリアしたり、過去の記録を更新することで達成感を感じるので、往々にしてポジティブで、高い自信を持っていられます。
一方、Ego orientedな選手は自分の能力が高いと感じている時(HPC: High Perceived Competence)と、低いと感じている時(LPC: Low Perceived Competence)で、行動に違いが出ます。自分に能力 があると感じているアスリートは、自分に能力があることを見せつけたいため、比較的簡単な課題を選びます。達成のための努力はあまりしません、なぜなら彼らは能力は生まれつき備わっているものと捉えてて、自分には能力があるというところを見せたいからです。彼らは自分の課題が成功しそうだと思っているうちは、逆境にも耐えられますが、一旦雲行きが怪しくなると、その忍耐力はもろいです。セルフイメージはポジティブで、自信も持てていますが、同時にもろさも兼ね備えています。
しかし、Ego orientedの選手が自分に能力を感じていないとき、彼らは極端に高いレベルか極端に低いレベルを選びます。なぜなら、極端に低いレベルなら必ず成功が期待出来るし、極端に高いレベルなら、失敗しても他の選手も同様に失敗する可能性があるので、自分が能力不足だと見られる危険性が少ないからです。このタイプのアスリートは、他者との競争の中で自分を見てる上に、自分の能力に自信がないため、自己疑念を抱きやすく、セルフイメージもネガティブで、努力や辛抱強さも期待出来ません。
現実問題、アスリートは内発的、外発的モチベーションと同じように、このTask、Egoも両方持っていると言えるでしょう。しかし、Ego orientedに偏ったアスリートは、自分の能力が高いと感じているうちは、行動やパフォーマンスに悪影響は及ばさないかもしれませんが、彼らは常に他者との比較で自己を評価する傾向があります。つまり、たとえ自己ベストを出したり、以前より技術や記録が進歩したとしても達成感を得られない可能性があるということです。なぜなら、自分がベストを尽くしても相手がそれより優っていたら、結果としては相手に敗れることになるからです。そのためEgo orientedの選手は、自信を失う危険性が高く、努力や忍耐力を見せることもなくなって、ついにはパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性が出てきます。
この理論は、指導者には大いに参考になるところだと思います。実際、勝負の世界では「こいつに負けてたまるか」というEgoの部分があるのは当然ですが、長い競技生活、常に相手に勝てるとは限りません。特に、相手のパフォーマンスは自分達のコントロール出来ない範疇であり、自分達がコントロール出来るものは努力であったり、プロセスであったりするので、日頃から、チームとしても、個人としてもTaskにフォーカスした目標を設定したり、個々の選手がそれぞれのレベルで進歩を見せたらポジティブなフィードバックを与える必要があるでしょう。
実際問題、スポーツ現場でこの理論を応用するとしたら、「オマエはEgoだからTaskにしろ」というようなアプローチではなく、Egoのアスリートが、自信を失ったり、ネガティブな感情を持ったりする危険性を軽減するために、監督、コーチがTaskにフォーカスしたアプローチを浸透させるという形になるでしょう。例えば、試合には負けたけど、ディフェンス面ではダブルプレーを3つ決めたので、その点は内野手の守備力向上に対してプラスの評価をする、とか、今日は内野でいくつかのエラーが出たけど、いずれも外野手の素早いバックアップのおかげで傷口が最小限で済んだとなれば、外野手のカバーリングへの姿勢を評価するべきでしょう。
さて、今回もモチベーションに関わるトピックで書いてきましたが、いかがだったでしょうか?前回の内発的、外発的の話よりちょっと複雑だったかもしれませんが、アスリートの行動パターンを把握するには、意外と役に立つ理論だと思います。いつものように、素朴な疑問やコメントをお待ちしています。