ここテネシーでは大学院で勉強している傍ら、毎週日曜日、隣町の日本人の野球少年たちの練習を手伝いに行っています。現地の学校に通う高校1年生(こちらでいう9年生)と中学1年生(同じく7年生)で2人とも毎週日曜日に熱心に自主練をしているので、何とか彼がうまくなれたらいいなと思って、練習の手伝いをさせてもらってます。
さて自分の役目はというと、野球の技術を教えてあげるのはもちろんだけど、自分の専門でもあるスポーツ心理学の要素をさりげなく、練習メニューに組み込んでいます。メンタルトレーニングというと、何やら、椅子に座って目をつぶってイメージトレーニングをやったりとか、寝転がってリラクセーションをしたりというイメージがあるかもしれませんが、アスリートにとって、一番の関心事はパフォーマンスを向上させること、試合で練習の成果を発揮させること。そのためには、何が大切かというと、当たり前の話ですが、日々の練習に他ならないわけです。充分な練習時間を確保するのはもちろんのこと、練習の質(Quality of Practice)にこだわることが大切です。そして、試合には「自分はこれだけやったから大丈夫」と自信を持って臨めることが、試合において望ましい精神状態と言えるわけです。高校生くらいになればどの選手も、毎日練習をしてます。でも、試合においてどこで差が出るかというのは、毎日の練習の仕方で、差が出てくるわけです。
ちなみに、先週の日曜日に彼らが行った練習内容です。
- キャッチボール
- ノック(守備練習)
- バッティング練習
- 5mくらいから軽くトスしたボールを打つ練習
- マウンドから投げたボールを打つ練習
- 試合形式
まあ、どこの野球選手もやる一般的な練習ですが、ここでは少しこれらも工夫しています。例えばキャッチボールの後半では、タッチの練習をします。普通キャッチボールでは、相手の胸に投げろと教わりますが、それは試合では常に当てはまるわけではありません。タッチプレーでは、より相手がタッチしやすい位置、つまり相手の膝の高さあたりに投げるのがベストなわけです。ボールを受ける方は、半身になって、ボールを捕ってそのままグラブを下に落としたら、ちょうどランナーがベースにスライディングしてくる位置でボールを捕るようにします。手を伸ばして捕ったら、タッチのために手を動かさなきゃいけない分、時間のロスになります。このほんのコンマ数秒にこだわることもQuality of Practiceの向上になるわけです。
ノックも一通り、基本プレーをした後は、試合の場面を設定します。最終回、同点でワンアウト満塁、または、ランナー三塁。ホームベースでタッチプレーかフォースプレーかという、どちらにしても、野手としては自分のプレーで試合が決まってしまうという最もプレッシャーがかかる場面です。ゴロを捕ってキャッチャーの正面に投げれば、もちろん合格点。でも、よりよいプレーを目指すのであれば、タッチプレーの時には、先ほどのタッチの練習の時のように、キャッチャーの左の膝元に、そして、フォースプレーであれば、ホーム→一塁のダブルプレーが狙えるのであれば、キャッチャーが捕った後、一塁に投げやすいように、キャッチャーの胸に。ホームでアウトを一個捕るだけであれば、キャッチャーが一番体を伸ばして捕れる位置である、ベルト付近に投げるのがベストです。
実際の試合でプレッシャーがかかるこのような場面で、一瞬のプレーを成功させるためには、それ相応の練習が必要です。まず、この練習では、
(1)しっかり状況を把握すること
- この場面、どこに投げるのが最優先か? → ホームベース
- 守備位置はどこか? → 前進または中間(アウトカウント、ランナーの位置、打者によって変わる)
- キャッチャーのどこに投げるのか? → タッチプレーかフォースプレーかを確認
- 投げる位置は状況によってどう変わるか? → 打球の強さ、捕球した体勢などによって
こうやって、メンタルトレーニングというものを日々の練習に取り入れていくことで、練習の質(Quality of Practice)の向上に役立つし、実際の試合で、練習の成果を発揮できる可能性を高めていくことになります。
バッティング練習については、また次回。
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