Tuesday, May 27, 2008

Quality of Practice

さて、早速更新。

ここテネシーでは大学院で勉強している傍ら、毎週日曜日、隣町の日本人の野球少年たちの練習を手伝いに行っています。現地の学校に通う高校1年生(こちらでいう9年生)と中学1年生(同じく7年生)で2人とも毎週日曜日に熱心に自主練をしているので、何とか彼がうまくなれたらいいなと思って、練習の手伝いをさせてもらってます。

さて自分の役目はというと、野球の技術を教えてあげるのはもちろんだけど、自分の専門でもあるスポーツ心理学の要素をさりげなく、練習メニューに組み込んでいます。メンタルトレーニングというと、何やら、椅子に座って目をつぶってイメージトレーニングをやったりとか、寝転がってリラクセーションをしたりというイメージがあるかもしれませんが、アスリートにとって、一番の関心事はパフォーマンスを向上させること試合で練習の成果を発揮させること。そのためには、何が大切かというと、当たり前の話ですが、日々の練習に他ならないわけです。充分な練習時間を確保するのはもちろんのこと、練習の質(Quality of Practice)にこだわることが大切です。そして、試合には「自分はこれだけやったから大丈夫」と自信を持って臨めることが、試合において望ましい精神状態と言えるわけです。高校生くらいになればどの選手も、毎日練習をしてます。でも、試合においてどこで差が出るかというのは、毎日の練習の仕方で、差が出てくるわけです。

ちなみに、先週の日曜日に彼らが行った練習内容です。

  • キャッチボール
  • ノック(守備練習)
  • バッティング練習
    • 5mくらいから軽くトスしたボールを打つ練習
    • マウンドから投げたボールを打つ練習
    • 試合形式


まあ、どこの野球選手もやる一般的な練習ですが、ここでは少しこれらも工夫しています。例えばキャッチボールの後半では、タッチの練習をします。普通キャッチボールでは、相手の胸に投げろと教わりますが、それは試合では常に当てはまるわけではありません。タッチプレーでは、より相手がタッチしやすい位置、つまり相手の膝の高さあたりに投げるのがベストなわけです。ボールを受ける方は、半身になって、ボールを捕ってそのままグラブを下に落としたら、ちょうどランナーがベースにスライディングしてくる位置でボールを捕るようにします。手を伸ばして捕ったら、タッチのために手を動かさなきゃいけない分、時間のロスになります。このほんのコンマ数秒にこだわることもQuality of Practiceの向上になるわけです。

ノックも一通り、基本プレーをした後は、試合の場面を設定します。最終回、同点でワンアウト満塁、または、ランナー三塁。ホームベースでタッチプレーかフォースプレーかという、どちらにしても、野手としては自分のプレーで試合が決まってしまうという最もプレッシャーがかかる場面です。ゴロを捕ってキャッチャーの正面に投げれば、もちろん合格点。でも、よりよいプレーを目指すのであれば、タッチプレーの時には、先ほどのタッチの練習の時のように、キャッチャーの左の膝元に、そして、フォースプレーであれば、ホーム→一塁のダブルプレーが狙えるのであれば、キャッチャーが捕った後、一塁に投げやすいように、キャッチャーの胸に。ホームでアウトを一個捕るだけであれば、キャッチャーが一番体を伸ばして捕れる位置である、ベルト付近に投げるのがベストです。

実際の試合でプレッシャーがかかるこのような場面で、一瞬のプレーを成功させるためには、それ相応の練習が必要です。まず、この練習では、

(1)しっかり状況を把握すること
  • この場面、どこに投げるのが最優先か? → ホームベース
  • 守備位置はどこか? → 前進または中間(アウトカウント、ランナーの位置、打者によって変わる)
(2)完成させたいプレーは?
  • キャッチャーのどこに投げるのか? → タッチプレーかフォースプレーかを確認
  • 投げる位置は状況によってどう変わるか? → 打球の強さ、捕球した体勢などによって
練習では一回一回、状況を少しずつ変えて、その都度彼らに、こちらから質問をして、確認させます。で、プレーの後に必要であれば、状況判断が正しかったか、正しい位置にボールが投げられたかなどのフィードバックを与えます。そして、一番強調するべきことは、これらのことは、試合において、全ての状況で、自分が守っている時に、ピッチャーが投げる前に行うべき準備なわけです。つまり、プレッシャーがかかる場面で、このような準備を周到に行うことで、自分が今、ここでやるべきことを確認し、それに集中することによって、余計なことに神経を使う余地がなくなるわけです(エラーをしたらどうしよう、とか)。さらにメンタル的なことを付け加えるとしたら、(1)の状況判断をしっかり他の野手に声を出して確認すること(チームプレー)、(2)の完成させたいプレーを実際自分が、成功させているイメージを瞬時に行うこと(イメージトレーニング)で、さらに他の選手や、自分自身の集中力を高めたり、自信を持って次の瞬間に臨むことが出来ます。ただ、繰り返しになりますが、こういったことをいかに日々の練習でやっておくかが、試合の一瞬のプレーにおいて明暗を分ける差になります。

こうやって、メンタルトレーニングというものを日々の練習に取り入れていくことで、練習の質(Quality of Practice)の向上に役立つし、実際の試合で、練習の成果を発揮できる可能性を高めていくことになります。

バッティング練習については、また次回。

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