Thursday, May 29, 2008

Quality of Practice バッティング編

さて、前回に続いてQuality of Practiceの話で、今回はバッティング練習編です。ここでもキーワードは準備です。

試合の状況を想定してバッティング練習を行うわけですが、実際、試合でボールを打つまでのプロセスを思いおこしてみます。ベンチから、ネクストバッターズサークルに向かいます。ストレッチをしたり、バットを振ったりして、体を温めて、前の打者に続いて、バッターボックスに入るわけです。中にはピッチャーを観察してタイミングをとっている選手もいるでしょう。

ピッチャーが18m先から140キロの球を投げた場合、ボールがピッチャーの手を離れてから、ホームベースに届くまでに要する時間は、わずかコンマ数秒。つまり、一旦、ピッチャーが振りかぶったらバッターには考える時間などありません。そんな一瞬の勝負を迎えて、バッターが出来る準備とはどんなことでしょうか?自分がこれから対戦するピッチャーがどんなピッチャーで、どんな球を投げて、自分はどのように打つのか。つまり、これから対戦するピッチャーのことをより理解していて、自分がどのように対応するかをなるべく鮮明にシミュレーション出来ている、というのが、試合で打席に入る際に望ましい準備と言えるでしょう。

実際、打席に入ってから、ピッチャーの球を目にして、タイミングを計って、という選手もいるかもしれませんが、打席を振り返ってみたら、見送った初球が唯一甘い球だったなんてことも充分にありえます。何より、初球というのはピッチャーも手探りだったりするわけで、バッターにとってはピッチャーを攻略するチャンスでもあります。なので、バッターとしては初球からベストスイングが出来るだけの準備をしておくのが望ましいでしょう。

さて、ネクストバッターズサークルでの時間を少しでも有意義にするためには、体を温めるだけというのでは、もったいなさすぎます。ネクストでは、これから対戦するピッチャーを観察するのに絶好の機会。まずピッチャーのモーション、球筋(ストレート、変化球ともに)を観察し、出来る限り鮮明にイメージします。出来る限りというのは、実際、打席で自分が目にするアングルで、18m先にピッチャーの姿を思い浮かべて、ピッチャーがモーションを開始して、白いボールが自分に向かってくるところまでイメージするということです。

次に、自分がピッチャーのモーションに合わせて、タイミングをとって、バットを振り出して、実際に、ジャストミートするというところまで、しっかりイメージしてみます。それが、まさしく、自分が数分後に打席で行いたいパフォーンマンスになるわけです。ストレートには、どういうタイミングでバットを出して、カーブやスライダーにはどのように反応するのか。相手投手については、すでにビデオで研究済みかもしれませんし、以前に対戦したことがあってだいたいわかっているかもしれません。しかし、ここで、今一度自分の頭の中で、自分が今まさにこのピッチャーから打つために、より鮮明なイメージを頭の中で思い浮かべてみるわけです。それが、コンマ数秒の間に行われるパフォーマンスを成功させる可能性を高めてくれるわけです。

さて、ここでの野球教室でも、毎回このプロセスをルーティン(routine)として行っています。バッティング練習で投げてるのはいつも自分ですが、その日によって調子が違うので、球筋も違うかもしれません。彼らも、その日によって調子が違うので、ボールの見え方などが変わってくるかもしれません。何よりも、常にパフォーマンスを行うためのメンタル的な準備として、毎回このルーティン(routine)を行っています。こうして、毎回毎回バッティング練習のたびに、これらの準備を行うことで、それが試合で自然と毎打席行う習慣になればしめたものです。相手が誰であれ、どんな状況であれ、自分が今ここでするべき準備というのは変わらないのです。自分なりのチェック項目をこのルーティン(routine)に組み込むことで、自分が今ここでやるべきことを認識出来ますし、ルーティン(routine)に没頭することで、集中力も高まります。こうして、ルーティン(routine)によって準備を一定させることで、パフォーマンスを安定させる可能性を高めることが出来るわけです。

こうして、前回と同じく、メンタルトレーニングを練習の現場に持ち込んで、繰り返し練習し、試合で実行する、という図式をつくることが出来ます。それが、まさに試合のための練習と呼べるものです。もし、試合でこのプロセスがうまく出来なかったら、また練習から始めればいいわけです。常に試合に向けての練習をし、試合は練習の成果を試す機会と捉え、試合で出来なかったことをまた練習に持ち帰って修正する、という試合と練習のいい相互関係を築くことが出来ます。

さて、次回はちょっと遊びを取り入れたバッティング練習を紹介します。

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