クラブ活動をしてます。
トーストマスターズクラブという、スピーチやコミュニケーション能力、リーダーシップを学ぶクラブに入ってます。詳しく覚えてないんだけど、イリノイに住んでいた時に、英語力を伸ばそうと思って始めたんだと思います。テネシーに移って来て、しばらく遠ざかってましたが、今年の冬あたりからまた再開しました。ちなみに日本にもあるようです(http://www.tokyointernational.org/xoops_jp/)。
このクラブでは通常、週1回ミーティングがあって、メンバーで手分けして役割を分担します。Toastmaster(司会)、Speaker、Evaluator、Table Topic Master、タイムキーパーなどがいます。Toastmasterは、単なる進行に留まらず、その時々の旬なトピックやら、スピーチの内容にちなんだエピソードなどを交えて、参加者が楽しめるような進行を心掛けなければいけません。
スピーチは、通常、1回のミーティングで1−2人(立候補)が準備をして来て行います。クラブで配られた冊子に1つ1つレベルが設定されてて、そのレベルごとに課題とちょっとしたアドバイスが与えられています。例えば、一番最初のスピーチは「自己紹介をしてみましょう」でした。その次は「自分の好きなトピックについて、聞き手がわかりやすいように上手にまとめて話してみましょう」でした。ボディランゲージをうまく使おうとか、ビジュアル機器を使いましょうとか、レベルが上がっていくことに課題もレベルアップしていくようです。課題ごとに5−7分とか8−10分と、時間も設定されていて、限られた時間内でうまくスピーチをまとめることが要求されます。
スピーチが終わると今度はTable Topicというものがあります。これはTable Topic Masterが、前へ出て、あらかじめ用意して来たトピックを出席者に順番に出題します。出席者はその場でトピックに合ったスピーチを1分くらいでやらなければいけません。例えば「ボブ、君は最近のガソリン価格の高騰についてどう思う?」と言ったものから「ナンシー、君がブログを始めるとしたら、どんな内容を書くつもり?」と言ったものまで何でもありです。とにかく即興で、手短にかつ聞き手を楽しませるようなスピーチをやるのが、このTable Topicの主旨です。
スピーチは全てEvaluatorに評価されて、Evaluatorは前に立って2−3分の中で、簡潔にかつ充分な評価内容を発表しなければいけません。「何がよかったか」、「ここをこうすればもっとよくなった」などなどを自分の視点で評価して、スピーチをした人に伝えます。
次に、タイムキーパーから、スピーチ、Table Topicのスピーチ、Evaluatiorの発表、それぞれにかかった時間が発表されます。これによって、スピーチが目標時間内に終えられたかを把握することが出来ます。さらに、全てのスピーチの途中で発せられた「Umm」、「Ah〜」、「You know」など聞き手の注意をそぐと思われるような単語やフレーズも数えられていて、これも最後に発表されます。
こうやって書くと、みんなピリピリしたムードで目を光らせて他人のミスをチェックしているような雰囲気なのかと思うかもしれませんが、そんなことはありません。イリノイにいる時は、メンバーは学生や教授が主体で、ネイティブスピーカーとはいえ、スピーチもどこかおぼつかなくて、みんなで学ぼうという雰囲気がありました。ここテネシーはビジネス関係の人が多くて、みんなすでにスピーチも司会も上手にこなしていると思うのですが、みんな熱心に取り組んでいます。雰囲気も、イリノイの時より、みんな気さくでリラックスした雰囲気を作ってくれています。
とはいえ、始めた頃はかなりのプレッシャーでした。スピーチは自分が前もって立候補していなければしゃべる必要がないので、立候補しない限りは黙っておけばいいのですが、Table Topicは原則、出席者は全員参加です。これが苦痛で苦痛で、何を聞かれるかわからないし、その場で即興でスピーチしろ、なんて日本語だって難しいものです。でも、場数を踏んで面の皮が厚くなって来たのか、開き直れて来たのか、最近は少しずつ慣れてきました。それでも、まだまだ課題はあります。テネシーで再開してからしばらく経ちますが、いまだに、1時間のミーティングを仕切るToastmasterや、スピーチを聴いたそばから評価をまとめて発表しなければいけないEvaluatorをやったことがありません。Toastmasterをやるには機転とそれを表現できるだけの英語のボキャも必要だし、Evaluatorは他人のスピーチを正確に理解して、2−3分内で評価をするようにまとめて、発表しなければいけません。リスニングに自信のない自分としては、万が一スピーチの内容がちんぷんかんだったことを考えると、ちょっと荷が重いです。
ということで、あたたかいメンバーに囲まれて、適度な緊張感の中、うまくいけば達成感、しくじると絶望感を味わえるなかなかスリリングな英語学習です。
Tuesday, June 10, 2008
Friday, May 30, 2008
Quality of Practice バッティング続編
Quality of Practice第三弾
今まで、いろいろと日々の練習にメンタルトレーニングを取り入れる方法を紹介してきましたが、今回はその続編。日頃、一生懸命練習している野球少年たちですが、彼らもまだ中学生、高校生。ということで、少し、遊び感覚を取り入れつつ、実践への応用も学べるという練習を取り入れています。
バッティング練習を2−3セットした後に、試合形式のバッティングを必ず取り入れます。先週の日曜日は、2人に最終回、ノーアウト満塁、得点は3点ビハインド、つまり3点取らなければ負けるという場面。2人が交互に打席に入って、3打席ずつ立てるというルール。つまり、6打席で目標3点という状況を設定。
最初は、
「え〜、無理です」
という反応。
「何でだよ、ノーアウト満塁だよ。で、6打席で3点だぜ」
と返す。
「でも、ゲッツーとかあるから。。。」
とどこまでもネガティブな発想。
「何てネガティブな!最終回にノーアウト満塁って言ったら、追いつめられてるのは相手だぞ。こっちはイケイケで、点とるだけじゃないか!!」
と一蹴。
試合形式のバッティングをすると、彼らの顔つきが全然違う。それまでの練習と同じ距離から、同じ速さのボールを投げても、かかるプレッシャーが違う。これこそ、この練習の目的。つまり、
こういった練習では、その場の打った、打たないで一喜一憂するのは、もちろんいいことなんだけど、しっかりプロセスの分析、次回への課題設定を行うことが大切です。
結局、この日は、1打席目でY君がレフト前ヒットを打ち、一気に勢いがついて、T君もヒットで続き、あっという間に2点。2打席目も2人でヒットが1本出て、あっさり目標達成。3打席目は、こちらも「そうは簡単に打たせるか」とちょっとムキになって、しっかり抑えました 笑
3打席、終えたところで、恒例のミーティング。何せ3人だけの練習なので、必ず1つの練習が終わったら彼らの感覚や、感想を逐一確認するようにしています。ちょこっと彼らも口頭で感想を述べましたが、今回は、この3打席の間の細かい心理状態を来週までに書いてくるように、と宿題を出しました。彼らがどんなこと書いてくるのか、こちらも楽しみですが、想像するに、最終回、3点差で負けていて、ノーアウト満塁。最初は緊張していた彼らも、点差が詰まるにつれて、「イケるんじゃないか」となったと思われます。で、最後はこちらが本気になったのを見て、「こりゃ、ヤバい」とまたネガティブになってしまった。人間の心理の何て面白いことか。「ノーアウト満塁での打席」という状況は変わらないのに、1点、また1点と、点差が縮んできたことで、心理状態はポジティブに変わり、同点までこぎつけて、状況としては押せ押せなのに、相手投手が本気になってのを見て、また不安が襲う。短期間の間に、ちょっとしたことで、これだけ人間の心理というのは変化するものなんですね。
来週、彼らの持ってくる宿題を見て、ミーティングをして、また練習を組み立てようと思います。
今まで、いろいろと日々の練習にメンタルトレーニングを取り入れる方法を紹介してきましたが、今回はその続編。日頃、一生懸命練習している野球少年たちですが、彼らもまだ中学生、高校生。ということで、少し、遊び感覚を取り入れつつ、実践への応用も学べるという練習を取り入れています。
バッティング練習を2−3セットした後に、試合形式のバッティングを必ず取り入れます。先週の日曜日は、2人に最終回、ノーアウト満塁、得点は3点ビハインド、つまり3点取らなければ負けるという場面。2人が交互に打席に入って、3打席ずつ立てるというルール。つまり、6打席で目標3点という状況を設定。
最初は、
「え〜、無理です」
という反応。
「何でだよ、ノーアウト満塁だよ。で、6打席で3点だぜ」
と返す。
「でも、ゲッツーとかあるから。。。」
とどこまでもネガティブな発想。
「何てネガティブな!最終回にノーアウト満塁って言ったら、追いつめられてるのは相手だぞ。こっちはイケイケで、点とるだけじゃないか!!」
と一蹴。
試合形式のバッティングをすると、彼らの顔つきが全然違う。それまでの練習と同じ距離から、同じ速さのボールを投げても、かかるプレッシャーが違う。これこそ、この練習の目的。つまり、
- 自分の精神状態はどうだったか?
- 準備(routine)はしっかり出来たか?
- 結果は?
- 成功したとしたら、何がよかったのか?
- 成功しなかったとしたら、なぜか?何が次回への課題か?
こういった練習では、その場の打った、打たないで一喜一憂するのは、もちろんいいことなんだけど、しっかりプロセスの分析、次回への課題設定を行うことが大切です。
結局、この日は、1打席目でY君がレフト前ヒットを打ち、一気に勢いがついて、T君もヒットで続き、あっという間に2点。2打席目も2人でヒットが1本出て、あっさり目標達成。3打席目は、こちらも「そうは簡単に打たせるか」とちょっとムキになって、しっかり抑えました 笑
3打席、終えたところで、恒例のミーティング。何せ3人だけの練習なので、必ず1つの練習が終わったら彼らの感覚や、感想を逐一確認するようにしています。ちょこっと彼らも口頭で感想を述べましたが、今回は、この3打席の間の細かい心理状態を来週までに書いてくるように、と宿題を出しました。彼らがどんなこと書いてくるのか、こちらも楽しみですが、想像するに、最終回、3点差で負けていて、ノーアウト満塁。最初は緊張していた彼らも、点差が詰まるにつれて、「イケるんじゃないか」となったと思われます。で、最後はこちらが本気になったのを見て、「こりゃ、ヤバい」とまたネガティブになってしまった。人間の心理の何て面白いことか。「ノーアウト満塁での打席」という状況は変わらないのに、1点、また1点と、点差が縮んできたことで、心理状態はポジティブに変わり、同点までこぎつけて、状況としては押せ押せなのに、相手投手が本気になってのを見て、また不安が襲う。短期間の間に、ちょっとしたことで、これだけ人間の心理というのは変化するものなんですね。
来週、彼らの持ってくる宿題を見て、ミーティングをして、また練習を組み立てようと思います。
Thursday, May 29, 2008
Quality of Practice バッティング編
さて、前回に続いてQuality of Practiceの話で、今回はバッティング練習編です。ここでもキーワードは準備です。
試合の状況を想定してバッティング練習を行うわけですが、実際、試合でボールを打つまでのプロセスを思いおこしてみます。ベンチから、ネクストバッターズサークルに向かいます。ストレッチをしたり、バットを振ったりして、体を温めて、前の打者に続いて、バッターボックスに入るわけです。中にはピッチャーを観察してタイミングをとっている選手もいるでしょう。
ピッチャーが18m先から140キロの球を投げた場合、ボールがピッチャーの手を離れてから、ホームベースに届くまでに要する時間は、わずかコンマ数秒。つまり、一旦、ピッチャーが振りかぶったらバッターには考える時間などありません。そんな一瞬の勝負を迎えて、バッターが出来る準備とはどんなことでしょうか?自分がこれから対戦するピッチャーがどんなピッチャーで、どんな球を投げて、自分はどのように打つのか。つまり、これから対戦するピッチャーのことをより理解していて、自分がどのように対応するかをなるべく鮮明にシミュレーション出来ている、というのが、試合で打席に入る際に望ましい準備と言えるでしょう。
実際、打席に入ってから、ピッチャーの球を目にして、タイミングを計って、という選手もいるかもしれませんが、打席を振り返ってみたら、見送った初球が唯一甘い球だったなんてことも充分にありえます。何より、初球というのはピッチャーも手探りだったりするわけで、バッターにとってはピッチャーを攻略するチャンスでもあります。なので、バッターとしては初球からベストスイングが出来るだけの準備をしておくのが望ましいでしょう。
さて、ネクストバッターズサークルでの時間を少しでも有意義にするためには、体を温めるだけというのでは、もったいなさすぎます。ネクストでは、これから対戦するピッチャーを観察するのに絶好の機会。まずピッチャーのモーション、球筋(ストレート、変化球ともに)を観察し、出来る限り鮮明にイメージします。出来る限りというのは、実際、打席で自分が目にするアングルで、18m先にピッチャーの姿を思い浮かべて、ピッチャーがモーションを開始して、白いボールが自分に向かってくるところまでイメージするということです。
次に、自分がピッチャーのモーションに合わせて、タイミングをとって、バットを振り出して、実際に、ジャストミートするというところまで、しっかりイメージしてみます。それが、まさしく、自分が数分後に打席で行いたいパフォーンマンスになるわけです。ストレートには、どういうタイミングでバットを出して、カーブやスライダーにはどのように反応するのか。相手投手については、すでにビデオで研究済みかもしれませんし、以前に対戦したことがあってだいたいわかっているかもしれません。しかし、ここで、今一度自分の頭の中で、自分が今まさにこのピッチャーから打つために、より鮮明なイメージを頭の中で思い浮かべてみるわけです。それが、コンマ数秒の間に行われるパフォーマンスを成功させる可能性を高めてくれるわけです。
さて、ここでの野球教室でも、毎回このプロセスをルーティン(routine)として行っています。バッティング練習で投げてるのはいつも自分ですが、その日によって調子が違うので、球筋も違うかもしれません。彼らも、その日によって調子が違うので、ボールの見え方などが変わってくるかもしれません。何よりも、常にパフォーマンスを行うためのメンタル的な準備として、毎回このルーティン(routine)を行っています。こうして、毎回毎回バッティング練習のたびに、これらの準備を行うことで、それが試合で自然と毎打席行う習慣になればしめたものです。相手が誰であれ、どんな状況であれ、自分が今ここでするべき準備というのは変わらないのです。自分なりのチェック項目をこのルーティン(routine)に組み込むことで、自分が今ここでやるべきことを認識出来ますし、ルーティン(routine)に没頭することで、集中力も高まります。こうして、ルーティン(routine)によって準備を一定させることで、パフォーマンスを安定させる可能性を高めることが出来るわけです。
こうして、前回と同じく、メンタルトレーニングを練習の現場に持ち込んで、繰り返し練習し、試合で実行する、という図式をつくることが出来ます。それが、まさに試合のための練習と呼べるものです。もし、試合でこのプロセスがうまく出来なかったら、また練習から始めればいいわけです。常に試合に向けての練習をし、試合は練習の成果を試す機会と捉え、試合で出来なかったことをまた練習に持ち帰って修正する、という試合と練習のいい相互関係を築くことが出来ます。
さて、次回はちょっと遊びを取り入れたバッティング練習を紹介します。
試合の状況を想定してバッティング練習を行うわけですが、実際、試合でボールを打つまでのプロセスを思いおこしてみます。ベンチから、ネクストバッターズサークルに向かいます。ストレッチをしたり、バットを振ったりして、体を温めて、前の打者に続いて、バッターボックスに入るわけです。中にはピッチャーを観察してタイミングをとっている選手もいるでしょう。
ピッチャーが18m先から140キロの球を投げた場合、ボールがピッチャーの手を離れてから、ホームベースに届くまでに要する時間は、わずかコンマ数秒。つまり、一旦、ピッチャーが振りかぶったらバッターには考える時間などありません。そんな一瞬の勝負を迎えて、バッターが出来る準備とはどんなことでしょうか?自分がこれから対戦するピッチャーがどんなピッチャーで、どんな球を投げて、自分はどのように打つのか。つまり、これから対戦するピッチャーのことをより理解していて、自分がどのように対応するかをなるべく鮮明にシミュレーション出来ている、というのが、試合で打席に入る際に望ましい準備と言えるでしょう。
実際、打席に入ってから、ピッチャーの球を目にして、タイミングを計って、という選手もいるかもしれませんが、打席を振り返ってみたら、見送った初球が唯一甘い球だったなんてことも充分にありえます。何より、初球というのはピッチャーも手探りだったりするわけで、バッターにとってはピッチャーを攻略するチャンスでもあります。なので、バッターとしては初球からベストスイングが出来るだけの準備をしておくのが望ましいでしょう。
さて、ネクストバッターズサークルでの時間を少しでも有意義にするためには、体を温めるだけというのでは、もったいなさすぎます。ネクストでは、これから対戦するピッチャーを観察するのに絶好の機会。まずピッチャーのモーション、球筋(ストレート、変化球ともに)を観察し、出来る限り鮮明にイメージします。出来る限りというのは、実際、打席で自分が目にするアングルで、18m先にピッチャーの姿を思い浮かべて、ピッチャーがモーションを開始して、白いボールが自分に向かってくるところまでイメージするということです。
次に、自分がピッチャーのモーションに合わせて、タイミングをとって、バットを振り出して、実際に、ジャストミートするというところまで、しっかりイメージしてみます。それが、まさしく、自分が数分後に打席で行いたいパフォーンマンスになるわけです。ストレートには、どういうタイミングでバットを出して、カーブやスライダーにはどのように反応するのか。相手投手については、すでにビデオで研究済みかもしれませんし、以前に対戦したことがあってだいたいわかっているかもしれません。しかし、ここで、今一度自分の頭の中で、自分が今まさにこのピッチャーから打つために、より鮮明なイメージを頭の中で思い浮かべてみるわけです。それが、コンマ数秒の間に行われるパフォーマンスを成功させる可能性を高めてくれるわけです。
さて、ここでの野球教室でも、毎回このプロセスをルーティン(routine)として行っています。バッティング練習で投げてるのはいつも自分ですが、その日によって調子が違うので、球筋も違うかもしれません。彼らも、その日によって調子が違うので、ボールの見え方などが変わってくるかもしれません。何よりも、常にパフォーマンスを行うためのメンタル的な準備として、毎回このルーティン(routine)を行っています。こうして、毎回毎回バッティング練習のたびに、これらの準備を行うことで、それが試合で自然と毎打席行う習慣になればしめたものです。相手が誰であれ、どんな状況であれ、自分が今ここでするべき準備というのは変わらないのです。自分なりのチェック項目をこのルーティン(routine)に組み込むことで、自分が今ここでやるべきことを認識出来ますし、ルーティン(routine)に没頭することで、集中力も高まります。こうして、ルーティン(routine)によって準備を一定させることで、パフォーマンスを安定させる可能性を高めることが出来るわけです。
こうして、前回と同じく、メンタルトレーニングを練習の現場に持ち込んで、繰り返し練習し、試合で実行する、という図式をつくることが出来ます。それが、まさに試合のための練習と呼べるものです。もし、試合でこのプロセスがうまく出来なかったら、また練習から始めればいいわけです。常に試合に向けての練習をし、試合は練習の成果を試す機会と捉え、試合で出来なかったことをまた練習に持ち帰って修正する、という試合と練習のいい相互関係を築くことが出来ます。
さて、次回はちょっと遊びを取り入れたバッティング練習を紹介します。
Tuesday, May 27, 2008
Quality of Practice
さて、早速更新。
ここテネシーでは大学院で勉強している傍ら、毎週日曜日、隣町の日本人の野球少年たちの練習を手伝いに行っています。現地の学校に通う高校1年生(こちらでいう9年生)と中学1年生(同じく7年生)で2人とも毎週日曜日に熱心に自主練をしているので、何とか彼がうまくなれたらいいなと思って、練習の手伝いをさせてもらってます。
さて自分の役目はというと、野球の技術を教えてあげるのはもちろんだけど、自分の専門でもあるスポーツ心理学の要素をさりげなく、練習メニューに組み込んでいます。メンタルトレーニングというと、何やら、椅子に座って目をつぶってイメージトレーニングをやったりとか、寝転がってリラクセーションをしたりというイメージがあるかもしれませんが、アスリートにとって、一番の関心事はパフォーマンスを向上させること、試合で練習の成果を発揮させること。そのためには、何が大切かというと、当たり前の話ですが、日々の練習に他ならないわけです。充分な練習時間を確保するのはもちろんのこと、練習の質(Quality of Practice)にこだわることが大切です。そして、試合には「自分はこれだけやったから大丈夫」と自信を持って臨めることが、試合において望ましい精神状態と言えるわけです。高校生くらいになればどの選手も、毎日練習をしてます。でも、試合においてどこで差が出るかというのは、毎日の練習の仕方で、差が出てくるわけです。
ちなみに、先週の日曜日に彼らが行った練習内容です。
まあ、どこの野球選手もやる一般的な練習ですが、ここでは少しこれらも工夫しています。例えばキャッチボールの後半では、タッチの練習をします。普通キャッチボールでは、相手の胸に投げろと教わりますが、それは試合では常に当てはまるわけではありません。タッチプレーでは、より相手がタッチしやすい位置、つまり相手の膝の高さあたりに投げるのがベストなわけです。ボールを受ける方は、半身になって、ボールを捕ってそのままグラブを下に落としたら、ちょうどランナーがベースにスライディングしてくる位置でボールを捕るようにします。手を伸ばして捕ったら、タッチのために手を動かさなきゃいけない分、時間のロスになります。このほんのコンマ数秒にこだわることもQuality of Practiceの向上になるわけです。
ノックも一通り、基本プレーをした後は、試合の場面を設定します。最終回、同点でワンアウト満塁、または、ランナー三塁。ホームベースでタッチプレーかフォースプレーかという、どちらにしても、野手としては自分のプレーで試合が決まってしまうという最もプレッシャーがかかる場面です。ゴロを捕ってキャッチャーの正面に投げれば、もちろん合格点。でも、よりよいプレーを目指すのであれば、タッチプレーの時には、先ほどのタッチの練習の時のように、キャッチャーの左の膝元に、そして、フォースプレーであれば、ホーム→一塁のダブルプレーが狙えるのであれば、キャッチャーが捕った後、一塁に投げやすいように、キャッチャーの胸に。ホームでアウトを一個捕るだけであれば、キャッチャーが一番体を伸ばして捕れる位置である、ベルト付近に投げるのがベストです。
実際の試合でプレッシャーがかかるこのような場面で、一瞬のプレーを成功させるためには、それ相応の練習が必要です。まず、この練習では、
(1)しっかり状況を把握すること
こうやって、メンタルトレーニングというものを日々の練習に取り入れていくことで、練習の質(Quality of Practice)の向上に役立つし、実際の試合で、練習の成果を発揮できる可能性を高めていくことになります。
バッティング練習については、また次回。
ここテネシーでは大学院で勉強している傍ら、毎週日曜日、隣町の日本人の野球少年たちの練習を手伝いに行っています。現地の学校に通う高校1年生(こちらでいう9年生)と中学1年生(同じく7年生)で2人とも毎週日曜日に熱心に自主練をしているので、何とか彼がうまくなれたらいいなと思って、練習の手伝いをさせてもらってます。
さて自分の役目はというと、野球の技術を教えてあげるのはもちろんだけど、自分の専門でもあるスポーツ心理学の要素をさりげなく、練習メニューに組み込んでいます。メンタルトレーニングというと、何やら、椅子に座って目をつぶってイメージトレーニングをやったりとか、寝転がってリラクセーションをしたりというイメージがあるかもしれませんが、アスリートにとって、一番の関心事はパフォーマンスを向上させること、試合で練習の成果を発揮させること。そのためには、何が大切かというと、当たり前の話ですが、日々の練習に他ならないわけです。充分な練習時間を確保するのはもちろんのこと、練習の質(Quality of Practice)にこだわることが大切です。そして、試合には「自分はこれだけやったから大丈夫」と自信を持って臨めることが、試合において望ましい精神状態と言えるわけです。高校生くらいになればどの選手も、毎日練習をしてます。でも、試合においてどこで差が出るかというのは、毎日の練習の仕方で、差が出てくるわけです。
ちなみに、先週の日曜日に彼らが行った練習内容です。
- キャッチボール
- ノック(守備練習)
- バッティング練習
- 5mくらいから軽くトスしたボールを打つ練習
- マウンドから投げたボールを打つ練習
- 試合形式
まあ、どこの野球選手もやる一般的な練習ですが、ここでは少しこれらも工夫しています。例えばキャッチボールの後半では、タッチの練習をします。普通キャッチボールでは、相手の胸に投げろと教わりますが、それは試合では常に当てはまるわけではありません。タッチプレーでは、より相手がタッチしやすい位置、つまり相手の膝の高さあたりに投げるのがベストなわけです。ボールを受ける方は、半身になって、ボールを捕ってそのままグラブを下に落としたら、ちょうどランナーがベースにスライディングしてくる位置でボールを捕るようにします。手を伸ばして捕ったら、タッチのために手を動かさなきゃいけない分、時間のロスになります。このほんのコンマ数秒にこだわることもQuality of Practiceの向上になるわけです。
ノックも一通り、基本プレーをした後は、試合の場面を設定します。最終回、同点でワンアウト満塁、または、ランナー三塁。ホームベースでタッチプレーかフォースプレーかという、どちらにしても、野手としては自分のプレーで試合が決まってしまうという最もプレッシャーがかかる場面です。ゴロを捕ってキャッチャーの正面に投げれば、もちろん合格点。でも、よりよいプレーを目指すのであれば、タッチプレーの時には、先ほどのタッチの練習の時のように、キャッチャーの左の膝元に、そして、フォースプレーであれば、ホーム→一塁のダブルプレーが狙えるのであれば、キャッチャーが捕った後、一塁に投げやすいように、キャッチャーの胸に。ホームでアウトを一個捕るだけであれば、キャッチャーが一番体を伸ばして捕れる位置である、ベルト付近に投げるのがベストです。
実際の試合でプレッシャーがかかるこのような場面で、一瞬のプレーを成功させるためには、それ相応の練習が必要です。まず、この練習では、
(1)しっかり状況を把握すること
- この場面、どこに投げるのが最優先か? → ホームベース
- 守備位置はどこか? → 前進または中間(アウトカウント、ランナーの位置、打者によって変わる)
- キャッチャーのどこに投げるのか? → タッチプレーかフォースプレーかを確認
- 投げる位置は状況によってどう変わるか? → 打球の強さ、捕球した体勢などによって
こうやって、メンタルトレーニングというものを日々の練習に取り入れていくことで、練習の質(Quality of Practice)の向上に役立つし、実際の試合で、練習の成果を発揮できる可能性を高めていくことになります。
バッティング練習については、また次回。
Monday, May 26, 2008
2008春
ご無沙汰です。
あれやこれやありましたが、2008年春学期も無事に終わりました。学期中はただでさえ余裕がなくなってしまう上に、今学期は体調を崩してしまったこともあり、ようやく終わってほっとしています。今学期を終了して、とりあえず無事卒業単位を取得することが出来ました!これから先は、コンプリヘンシブ試験、博士論文に取り組むことになり、来年春の卒業を目指します。あまり実感はないのですが、一応は節目を迎えたということで、とりあえずブログにて報告。そして、これをきっかけに何とかブログの更新頻度をあげていきたい、と熱烈に思っています 笑。
実は、今までブログの更新が滞っていた理由のひとつに、知らず知らずのうちに、たいそうなことを書こうと力みすぎていたような気がするので、今後は少し力を抜いて、メンタルのこと、大学院生活のこと、なんかをつらつらと書いてみようかと思います。アメリカ生活のしょーもないアホな日記はミクシイの方でちょくちょく書いていくとして、こちらでは、もう少し日々考えていることや、メンタルのことなんかを更新出来たらいいかなと思います。
少し力を抜いて、といった矢先になんだけど、大学院生活もあと1年(予定)を残すだけとなり、この1年は環境的にも、心境的にもいろいろと動きが見られることが予想されます。まあ、そんな中、自分を鼓舞する意味でも、このブログを再開するのもいいかな、と思っています。頭は冷静に、でも、ハートは熱く、自分のゴールに向かって、走り抜きたいと思います。
あれやこれやありましたが、2008年春学期も無事に終わりました。学期中はただでさえ余裕がなくなってしまう上に、今学期は体調を崩してしまったこともあり、ようやく終わってほっとしています。今学期を終了して、とりあえず無事卒業単位を取得することが出来ました!これから先は、コンプリヘンシブ試験、博士論文に取り組むことになり、来年春の卒業を目指します。あまり実感はないのですが、一応は節目を迎えたということで、とりあえずブログにて報告。そして、これをきっかけに何とかブログの更新頻度をあげていきたい、と熱烈に思っています 笑。
実は、今までブログの更新が滞っていた理由のひとつに、知らず知らずのうちに、たいそうなことを書こうと力みすぎていたような気がするので、今後は少し力を抜いて、メンタルのこと、大学院生活のこと、なんかをつらつらと書いてみようかと思います。アメリカ生活のしょーもないアホな日記はミクシイの方でちょくちょく書いていくとして、こちらでは、もう少し日々考えていることや、メンタルのことなんかを更新出来たらいいかなと思います。
少し力を抜いて、といった矢先になんだけど、大学院生活もあと1年(予定)を残すだけとなり、この1年は環境的にも、心境的にもいろいろと動きが見られることが予想されます。まあ、そんな中、自分を鼓舞する意味でも、このブログを再開するのもいいかな、と思っています。頭は冷静に、でも、ハートは熱く、自分のゴールに向かって、走り抜きたいと思います。
Sunday, October 21, 2007
気持ちを込めたボール
メジャーリーグはいよいよワールドシリーズへ突入した。今回のトピックは、先日のアメリカンリーグチャンピオンシップでの話である。インディアンズ3勝2敗で迎えたボストンでの第6戦。この試合は、ボストンがプレーオフの実績充分の大ベテランCurt Schilling、クリーブランドはレギュラーシーズン19勝の若きFausto Carmonaの先発。Schillingは往年の球のスピードこそないが、ファストボールのコントロールと、スプリットを丁寧に投げ分ける、ベテランらしい落ち着いたピッチングスタイル。一方のCarmonaは95マイルを越える、ムービングファストボール(カットボール?)とフォーシームファストボールを武器に、右バッターの内側、左バッターの外をついてくるピッチングで、ディビジョンシリーズでは見事ヤンキースを封じ込めた。
結論から言うと、試合は12−2の一方的な展開でボストンが勝ったんだが、初回のボストンの攻撃がこの試合に非常に大きな影響を与えたので、そこに焦点を絞る。ボストンの打線は何て言っても、3番 David Ortiz、4番 Manny Ramirezの破壊力に注目が行く。2人合わせてメジャー通算ホームラン750本、2400打点以上をたたき出している。しかもこの2人のポストシーズンでの活躍は非常に印象に残るところで、彼らの勝負強さの前には、相手ピッチャーとしてはこの2人の前には何としてもランナーを出したくないというのが正直なところ。しかし、実際このシリーズ、特に後半は、ボストン打線は、多くの選手が振れていて、手がつけられないような状況であった。
さて、迎えた1回の裏ボストンの攻撃、先頭のDustin Pedroiaはセカンドベースよりにボテボテのゴロを打って内野安打。続く、Kevin Youkilisもまた、ボテボテのゴロを三遊間に転がし、これも内野安打。3番David Ortizはフォアボールを選んで、あっという間にノーアウト満塁。地元ボストンの大歓声が、先発ピッチャーCarmonaに突き刺さる。迎えるはポストシーズンで、ホームラン20本以上打ってる4番、Manny Ramirez。ここをCarmonaは何とか粘って三振に抑え、続くLowellを浅い外野フライに切って取る。無得点のままツーアウト満塁で迎えたのは、このシリーズ、この打線の中ではやや不調のJD Drew。ボストンファンからしてみれば、万事休すかと思われ、クリーブランドサイドから見れば、何とか逃げ切れるか、と思った矢先、カウント1−3からDrewが見事にセンターオーバーの満塁ホームランを放つ。Carmonaは後続を断ち、続く2回も無得点で抑えるも、3回にまた連打を浴びて降板。
続いて、場面は変わって、第7戦。ボストンはご存知、松坂大輔、クリーブランドは、シンカー系のムービングファストボールで内野ゴロの山を築く、Westbrookの先発。この日もボストン打線は初回から絶好調。簡単に1、2番Pedroia、Youkilisがヒットで出塁して、ノーアウト1、2塁。この日もクリーンアップを前にしっかりお膳立てが出来る。Westbrookは、ここで迎えたDavid Ortizを果敢にインコースを攻めて三振。続く、Ramirezには、ショート正面に痛打される。しかもこの打球がショート手前で大きく跳ねて、レフトに抜けていき、1点を失う。この時点で、ボストンは勢いと、運をも味方につけ、この試合の流れを大きく引き寄せているような印象を与える。さらに、続く5番Lowellにレフト前に運ばれ、ワンアウト満塁でDrewに打席が回る。誰もが、昨日のグランドスラムを頭に思い浮かべたであろうこの場面、Westbrookは初球の外のボール(ツーシーム系?)を引っ掛かけさせ、ショートゴロダブルプレーで、ピンチを脱する。
続く、2回の裏のボストンの攻撃。先頭のVaritekがレフトオーバーのツーベースで出塁し、8番Ellsburyもレフト前ヒットで続き、あっさりノーアウト1.3塁。クリーブランド先発のWestbrookは、ここでラストバッターLugoをインコース低めのムービングファストボールで引っ掛けさせ、ショートゴロダブルプレー。その間に、1点を失うも、この回を切り抜ける。
3回の裏、先頭、2番のYukilisにツーベースを打たれ、またもクリーンアップを前にランナーを許す。迎えたOrtizにインコースを引っ掛けさせ、ファーストゴロで、ワンアウト三塁。Ramirezを敬遠で、5番のLowellに犠牲フライを許し、1点献上。
4回は、ワンアウト1、3塁のピンチに1番、Pedroiaをセカンドゴロダブルプレーに打ち取り無失点。5回は、2番から始まるボストンの攻撃を三者凡退。特に当たってるYoukilis、Ramirezを見事三振に斬って取る。6回も、三者凡退。奪三振2。
結局、試合が始まった頃には、この先どうなることかと思われたが、Westbrookは6回を被安打9ながら、再三のピンチを3つのダブルプレーで凌ぎ、中盤は尻上がりに調子を上げ、打線の援護を待つ。一方の打線も、苦しみながらも、松坂を少しずつ攻略し、2点を奪い、6回を終えて3−2と、1点ビハインドのまま後半に望みをつないだ。結果は、自力に勝るボストンが、後半、一気にクリーブランドを引き離し、11−2と大勝してワールドシリーズに駒を進めることになるのだが。
この両先発投手を襲った状況は非常に対照的だった。、Carmonaは、非常に不運な内野安打2本と、フォアボールで満塁にしてしまった。一方で、Westbrookは好調ボストン打線にヒット3本で満塁にされた。Carmonaは得意の右バッターのインサイドに食い込むムービングファストボールがことごとく、ボールの判定を受けてしまったことで、リズムに乗り切れなかったように見えた。一方で、Westbrookはランナーを背負っても、ホームベースは踏ませまいと、コーナーを丁寧に投げ続け、傷口を最小限にとどめた。
プレーオフ第7戦、勝ったらワールドシリーズ進出、負けたらシーズン終了というこの試合で、初回から連打を浴び続けながらも、粘り続ける、マウンド上でのメンタル面たるや、どんな状況だったのだろうか?試合後のコメントでWestbrook自身は、「強い気持ちを持って投げた」と言っていたが、「1点も やってたまるか!」と強く感情に訴えていたのか、「打者1人1人、1球1球、丁寧に投げよう」と自分を落ち着かせながらの投球だったのか。
Westbrookは、「何とか接戦に持ち込みたかった」「打線の援護を待った」とも言っていたが、改めて、野球は投手と野手の兼ね合い、気持ちのつながりが、大事だと思った。投手が打たれながらも、踏ん張って、最少失点に 抑えていることによって、打線が奮起して何とか点をもぎ取る、そんな展開が、第7戦のクリーブランドには明らかに見えた。一方の、第6戦では、残念ながら 先発ピッチャーが踏ん張りきることが出来ず、序盤から試合がワンサイドになってしまった。
会見でWestbrookは何度か「I felt strong」を繰り返した。大勝負を任された投手としてのプライド、ゲームを作るという先発投手としての強い責任感、野手を信じるというチームの一員としての気持ち、そんな様々な強い気持ちが、このセリフに集約されているように感じた。残念ながらチームの勝利には結びつかなかったが、彼の強い気持ちがボールに伝わっていた、心を奪われる見事なパフォーマンスだった。
結論から言うと、試合は12−2の一方的な展開でボストンが勝ったんだが、初回のボストンの攻撃がこの試合に非常に大きな影響を与えたので、そこに焦点を絞る。ボストンの打線は何て言っても、3番 David Ortiz、4番 Manny Ramirezの破壊力に注目が行く。2人合わせてメジャー通算ホームラン750本、2400打点以上をたたき出している。しかもこの2人のポストシーズンでの活躍は非常に印象に残るところで、彼らの勝負強さの前には、相手ピッチャーとしてはこの2人の前には何としてもランナーを出したくないというのが正直なところ。しかし、実際このシリーズ、特に後半は、ボストン打線は、多くの選手が振れていて、手がつけられないような状況であった。
さて、迎えた1回の裏ボストンの攻撃、先頭のDustin Pedroiaはセカンドベースよりにボテボテのゴロを打って内野安打。続く、Kevin Youkilisもまた、ボテボテのゴロを三遊間に転がし、これも内野安打。3番David Ortizはフォアボールを選んで、あっという間にノーアウト満塁。地元ボストンの大歓声が、先発ピッチャーCarmonaに突き刺さる。迎えるはポストシーズンで、ホームラン20本以上打ってる4番、Manny Ramirez。ここをCarmonaは何とか粘って三振に抑え、続くLowellを浅い外野フライに切って取る。無得点のままツーアウト満塁で迎えたのは、このシリーズ、この打線の中ではやや不調のJD Drew。ボストンファンからしてみれば、万事休すかと思われ、クリーブランドサイドから見れば、何とか逃げ切れるか、と思った矢先、カウント1−3からDrewが見事にセンターオーバーの満塁ホームランを放つ。Carmonaは後続を断ち、続く2回も無得点で抑えるも、3回にまた連打を浴びて降板。
続いて、場面は変わって、第7戦。ボストンはご存知、松坂大輔、クリーブランドは、シンカー系のムービングファストボールで内野ゴロの山を築く、Westbrookの先発。この日もボストン打線は初回から絶好調。簡単に1、2番Pedroia、Youkilisがヒットで出塁して、ノーアウト1、2塁。この日もクリーンアップを前にしっかりお膳立てが出来る。Westbrookは、ここで迎えたDavid Ortizを果敢にインコースを攻めて三振。続く、Ramirezには、ショート正面に痛打される。しかもこの打球がショート手前で大きく跳ねて、レフトに抜けていき、1点を失う。この時点で、ボストンは勢いと、運をも味方につけ、この試合の流れを大きく引き寄せているような印象を与える。さらに、続く5番Lowellにレフト前に運ばれ、ワンアウト満塁でDrewに打席が回る。誰もが、昨日のグランドスラムを頭に思い浮かべたであろうこの場面、Westbrookは初球の外のボール(ツーシーム系?)を引っ掛かけさせ、ショートゴロダブルプレーで、ピンチを脱する。
続く、2回の裏のボストンの攻撃。先頭のVaritekがレフトオーバーのツーベースで出塁し、8番Ellsburyもレフト前ヒットで続き、あっさりノーアウト1.3塁。クリーブランド先発のWestbrookは、ここでラストバッターLugoをインコース低めのムービングファストボールで引っ掛けさせ、ショートゴロダブルプレー。その間に、1点を失うも、この回を切り抜ける。
3回の裏、先頭、2番のYukilisにツーベースを打たれ、またもクリーンアップを前にランナーを許す。迎えたOrtizにインコースを引っ掛けさせ、ファーストゴロで、ワンアウト三塁。Ramirezを敬遠で、5番のLowellに犠牲フライを許し、1点献上。
4回は、ワンアウト1、3塁のピンチに1番、Pedroiaをセカンドゴロダブルプレーに打ち取り無失点。5回は、2番から始まるボストンの攻撃を三者凡退。特に当たってるYoukilis、Ramirezを見事三振に斬って取る。6回も、三者凡退。奪三振2。
結局、試合が始まった頃には、この先どうなることかと思われたが、Westbrookは6回を被安打9ながら、再三のピンチを3つのダブルプレーで凌ぎ、中盤は尻上がりに調子を上げ、打線の援護を待つ。一方の打線も、苦しみながらも、松坂を少しずつ攻略し、2点を奪い、6回を終えて3−2と、1点ビハインドのまま後半に望みをつないだ。結果は、自力に勝るボストンが、後半、一気にクリーブランドを引き離し、11−2と大勝してワールドシリーズに駒を進めることになるのだが。
この両先発投手を襲った状況は非常に対照的だった。、Carmonaは、非常に不運な内野安打2本と、フォアボールで満塁にしてしまった。一方で、Westbrookは好調ボストン打線にヒット3本で満塁にされた。Carmonaは得意の右バッターのインサイドに食い込むムービングファストボールがことごとく、ボールの判定を受けてしまったことで、リズムに乗り切れなかったように見えた。一方で、Westbrookはランナーを背負っても、ホームベースは踏ませまいと、コーナーを丁寧に投げ続け、傷口を最小限にとどめた。
プレーオフ第7戦、勝ったらワールドシリーズ進出、負けたらシーズン終了というこの試合で、初回から連打を浴び続けながらも、粘り続ける、マウンド上でのメンタル面たるや、どんな状況だったのだろうか?試合後のコメントでWestbrook自身は、「強い気持ちを持って投げた」と言っていたが、「1点も やってたまるか!」と強く感情に訴えていたのか、「打者1人1人、1球1球、丁寧に投げよう」と自分を落ち着かせながらの投球だったのか。
Westbrookは、「何とか接戦に持ち込みたかった」「打線の援護を待った」とも言っていたが、改めて、野球は投手と野手の兼ね合い、気持ちのつながりが、大事だと思った。投手が打たれながらも、踏ん張って、最少失点に 抑えていることによって、打線が奮起して何とか点をもぎ取る、そんな展開が、第7戦のクリーブランドには明らかに見えた。一方の、第6戦では、残念ながら 先発ピッチャーが踏ん張りきることが出来ず、序盤から試合がワンサイドになってしまった。
会見でWestbrookは何度か「I felt strong」を繰り返した。大勝負を任された投手としてのプライド、ゲームを作るという先発投手としての強い責任感、野手を信じるというチームの一員としての気持ち、そんな様々な強い気持ちが、このセリフに集約されているように感じた。残念ながらチームの勝利には結びつかなかったが、彼の強い気持ちがボールに伝わっていた、心を奪われる見事なパフォーマンスだった。
Saturday, October 06, 2007
この場面で、この一球
メジャーリーグのプレーオフが始まりました。年間162試合もやってるメジャーリーガーが、シーズンの最後の最後にワールドチャンピオンを賭けて戦うというのは、大きな名誉であると同時に、肉体的にも精神的にも相当すり減ってる状態だと思われます。一方、見ている方は、このプロ中のプロたちが、一試合も負けられないというプレッシャーの中で戦うというのは、一球一球が本当に重みのある、非常に見ごたえのある試合だと言えるでしょう。現に、過去のプレーオフを思い返してみても、信じられないような凡ミスで試合が決まったり、流れが変わったりという場面があり、いかにプレーオフでのプレッシャーが大きいかということを物語っています。
昨日、10月5日はクリーブランドでヤンキースとインディアンズのディビジョンシリーズが行われました。初戦はすでにインディアンズが大勝しており、5回戦勝負のこのシリーズでは、ヤンキースはこの試合を落とすと、インディアンズにリーチがかかるというとても大切な試合。試合はヤンキースがホームランで1点をリードしたものの、8回の裏にワイルドピッチで同点に追いつかれます。ヤンキースは同点の状況で抑えの守護神、マリアーノ リベラを出し反撃を待つものの、打線は沈黙し続け延長11回へ。
11回の裏、ヤンキースのピッチャーはビスカイーノへ。先頭バッター、フォアボール。送りバントを続けて失敗して追い込んだ次のバッターにレフト前にヒットを打たれ、犠打、敬遠のフォアボールで、ワンアウト満塁。次のバッターを抑えるも、なおツーアウト満塁で、迎えたのは長距離砲、ハフナー。カウント、ツースリーからライトへヒットを打ち、インディアンズが延長戦を制する。
さて、野球の解説的にも、いろいろ話題が豊富なこの場面ですが、とりあえずメンタル的な話をひとつ。
負けたら相手にリーチがかかる、プレーオフ2戦目の11回の裏。
同点。
ランナー満塁。
打席には3番打者。
フルカウント。
さて、この場面で、投げる球はどんな球ですか?
そしてなぜその球を選んだんですか?
その球を、どれだけ練習してきましたか?
そして、その球をこの場面でどれだけ自信を持って投げられますか?
この場面を迎えた選手として、選手を送り出すコーチとして、心のよりどころになるのは何でしょうか?運にも左右されるでしょうが、この場面祈るだけでは、あまりにも頼りないですよね。では、何でしょうか?やはりそれは日々の積み重ねです。日々、何を(What)どのように(How)どれだけ(How much)してきたか、というのがモノを言うのが、こういう場面です。
メンタルトレーニングのアプローチというのはいろいろありますが、その中でも大きな1つが、練習(トレーニング)の質の向上にあります。アスリートにとって毎日の練習、トレーニングというの欠かせませんし、その質、量というのは何よりも大切なものです。もちろん、試合の一場面においての一球というのは、相手打者との駆け引きや、試合の展開などで、配球はいろいろ変わってくるのですが、大事な場面を任される投手として、日々の練習の中で、「この場面での一球」を投げる準備というのは大切でしょう。
自分が一番自信を持てる球種は何か?
それをどのコースに投げるのか?
その球種を狙ったコースに10球中、何球投げられるか?(20球中では?30球中では?)
それを勝負のかかった場面を想定しても、同じような確率で投げられるか?
ブルペンでバッターを立たせても同じように投げられるか?
試合形式は?
オープン戦では?
これらの問いに答えていく中で、もちろん技術的な課題も出てくるでしょうし、それを5イニング目だろうが9イニング目だろうが投げられるような体力的な課題も出てくるかもしれません。では、心理的な課題はどうでしょうか?
マウンド上で投球準備の際に行うアプローチはありますか?
プレッシャーがかかる場面で、気持ちを落ち着けるアプローチはありますか?
それは肉体的な緊張をほぐすものですか?
感情や思考を落ち着けるものですか?
両方かもしれません。
もしくは何か自分を鼓舞するためのアプローチはありますか?
さて、みなさんは毎日の練習でどれだけ試合への準備が出来ていますか?
昨日、10月5日はクリーブランドでヤンキースとインディアンズのディビジョンシリーズが行われました。初戦はすでにインディアンズが大勝しており、5回戦勝負のこのシリーズでは、ヤンキースはこの試合を落とすと、インディアンズにリーチがかかるというとても大切な試合。試合はヤンキースがホームランで1点をリードしたものの、8回の裏にワイルドピッチで同点に追いつかれます。ヤンキースは同点の状況で抑えの守護神、マリアーノ リベラを出し反撃を待つものの、打線は沈黙し続け延長11回へ。
11回の裏、ヤンキースのピッチャーはビスカイーノへ。先頭バッター、フォアボール。送りバントを続けて失敗して追い込んだ次のバッターにレフト前にヒットを打たれ、犠打、敬遠のフォアボールで、ワンアウト満塁。次のバッターを抑えるも、なおツーアウト満塁で、迎えたのは長距離砲、ハフナー。カウント、ツースリーからライトへヒットを打ち、インディアンズが延長戦を制する。
さて、野球の解説的にも、いろいろ話題が豊富なこの場面ですが、とりあえずメンタル的な話をひとつ。
負けたら相手にリーチがかかる、プレーオフ2戦目の11回の裏。
同点。
ランナー満塁。
打席には3番打者。
フルカウント。
さて、この場面で、投げる球はどんな球ですか?
そしてなぜその球を選んだんですか?
その球を、どれだけ練習してきましたか?
そして、その球をこの場面でどれだけ自信を持って投げられますか?
この場面を迎えた選手として、選手を送り出すコーチとして、心のよりどころになるのは何でしょうか?運にも左右されるでしょうが、この場面祈るだけでは、あまりにも頼りないですよね。では、何でしょうか?やはりそれは日々の積み重ねです。日々、何を(What)どのように(How)どれだけ(How much)してきたか、というのがモノを言うのが、こういう場面です。
メンタルトレーニングのアプローチというのはいろいろありますが、その中でも大きな1つが、練習(トレーニング)の質の向上にあります。アスリートにとって毎日の練習、トレーニングというの欠かせませんし、その質、量というのは何よりも大切なものです。もちろん、試合の一場面においての一球というのは、相手打者との駆け引きや、試合の展開などで、配球はいろいろ変わってくるのですが、大事な場面を任される投手として、日々の練習の中で、「この場面での一球」を投げる準備というのは大切でしょう。
自分が一番自信を持てる球種は何か?
それをどのコースに投げるのか?
その球種を狙ったコースに10球中、何球投げられるか?(20球中では?30球中では?)
それを勝負のかかった場面を想定しても、同じような確率で投げられるか?
ブルペンでバッターを立たせても同じように投げられるか?
試合形式は?
オープン戦では?
これらの問いに答えていく中で、もちろん技術的な課題も出てくるでしょうし、それを5イニング目だろうが9イニング目だろうが投げられるような体力的な課題も出てくるかもしれません。では、心理的な課題はどうでしょうか?
マウンド上で投球準備の際に行うアプローチはありますか?
プレッシャーがかかる場面で、気持ちを落ち着けるアプローチはありますか?
それは肉体的な緊張をほぐすものですか?
感情や思考を落ち着けるものですか?
両方かもしれません。
もしくは何か自分を鼓舞するためのアプローチはありますか?
さて、みなさんは毎日の練習でどれだけ試合への準備が出来ていますか?
Tuesday, June 19, 2007
自信をつけるには
みなさんが、アスリートとして是非持っていたいものは何でしょうか?もしみなさんがコーチをしているなら、これから試合に送り出すアスリートに持っていてほしいものは何でしょうか?そのひとつは「自信」ではないでしょうか。スポーツ心理学の世界で柱となる理論の1つに、Self-Efficacyの理論というのがあります。今回は、Albert Banduraという心理学者が提唱したこの理論を少し説明してみましょう。
Self-Efficacyと聞くと、かなり馴染みの薄い英単語に聞こえてしまいますが、ここはひとまず「自信」でかたづけておきましょう。まず、このSelf-Efficacyを高めるための4つの要素を紹介します。
さて、このように自信が高まったアスリートは、思考、行動、感情などの面で変化が見られます。まず、自信が高まれば、自分の能力や状況についてポジティブに捉えられます。モチベーションもだいぶ変わってきます。自信が高まったアスリートはより難しいことに挑戦しようと思えます。そして、その課題をクリアするために努力をするようになり、その努力も根気よく続けるようになります。自信が高まれば、自分の成功は自分の実力があるからだ、努力をしてきたからだと捉えられるようになり成功体験によってますますモチベーションが高まりますが、自信があまりないアスリートは自分の成功を運がよかったからだとか、相手がミスをしたからだ、と捉えるようになり、成功体験をしてもなかなか行動に変化が現れません。自信が高まれば、もちろん感情も安定してきますし、また何かに挑戦しようという気力も芽生えます。こうして、自信が高まることで思考、行動、感情の面に変化が起これば、パフォーマンスにもいい影響を及ぼすことが期待出来ますね。
さて、理論はわかったけど、実際どうやってこの理論を使えばいいの?という疑問がわいてくる頃でしょうか。ここからが理論に基づいたメンタルトレーニングを出来るかどうかの腕の見せ所です。まずは効果的な思考法を身につけましょう。この理論の一番大きな柱である「過去の成功」を体験するためには、ゴールを設定することが有効でしょう。それも、結果ではなくてプロセスに着目したゴールです。なぜならプロセスというのは結果に比べて、自分の努力次第で改善することが出来るからです。つまり自分のコントロールの及ぶ範囲だということです。例えばバッティング練習で10球のうち7球ヒットを打とう(結果)、というのと7球芯に当てよう(プロセス)というのではどこが違うでしょう?ヒットというのは、仮にいい当たりを打っても野手に捕られてしまってはなりません。つまり、目標未達になってしまいます。それでは、せっかくいい当たりをしてるのに、自信を高めることが出来なくなってしまいます。しかし、「バットの芯に当てる」というプロセスに注目することによって、外的要素(野手など)に影響されることが少なくなり、自分のパフォーマンスの精度の向上→目標達成→自信の向上ということになるわけです。
次に、自分の中で試合で行うパフォーマンスについてのリハーサルを充分にしておきましょう。つまり、自分の中で試合と全く同じ(または限りなくそれに近い)状況で「成功」を体験することで、試合での自信が高められるということです。実際、練習メニューをいかに実践に近い状況で出来るかっていうことも大きな鍵でしょう。ここテネシー大学のフットボール部の練習で、スタジアムの歓声の音を練習中にスピーカーから流しているのを見たことがあります。彼らは本番では10万人の観客の前で試合をしなければいけません。こうした準備が、本当に「試合のため」の準備だと思います。イメージトレーニングも有効な手段です。これは、自分が試合で発揮したいパフォーマンスを繰り返しイメージすることによって、「試合での成功体験」を身近に体験することが出来ます。過去に実際に成功したシーンを思い返してイメージするのもいいでしょうし、これから成功するところをイメージするのもいいでしょう。いずれにしても試合を前に「成功」をイメージしておくことは、Self-Efficacyの理論の中での「過去の成功体験」を満たすことになりますし。イメージの中で「オレは必ず成功する」というSelf-Talkも織り交ぜていけば「口頭による説得」も使うことが出来ますし、自分の成功する姿をイメージすることはもちろん「Modeling」にもなるし、成功体験をイメージすることによって「生理的状態」もよくなります。というわけで、イメージトレーニングというのはメンタルトレーニングの中でも代表的なスキルと言うわけです。
最後にModelingの効果についてもう少し書きます。Modelingの中には、他者を取り込む外的なものと、自分の姿を取り込む内的なものがあります。他者を取り込むものとしては、先ほど、自分と似た他者のパフォーマンスを見ることで自分の可能性についての自信を高めるものと言いましたが、何もパフォーマンスだけに限りません。態度や行動というのもModelingの対象になります。例えば、試合を前にして、または試合中に、監督やコーチが妙にそわそわしているのと、堂々とベンチに座っているのとでは、選手に与える影響に違いが出ます。つまり監督やコーチが堂々と自信を持って振る舞えば、その態度や行動は必ず選手に伝わるというものです。それから、自分の姿を取り込むSelf-Modelingについては、ビデオを使うのも有効な手段です。過去の成功している自分の映像を見ることによって、その時のパフォーマンス、自信がみなぎっている振る舞いが、自信を高めるのに役立つでしょう。また、ケガをしている選手が、どうしても以前のようなパフォーマンスが出来ず行き詰まっていたとします。もちろんケガの回復状況にもよりますが、過去の成功したパフォーマンスを見ることで、ケガの再発への恐怖などからもう一歩踏み出せずにいる状況から抜け出せるかもしれません。最後に、自分の中で成功へのストーリーを描くことも有効な手段です。「自分は◯◯だから成功する」というストーリーを自分の中でリアルに描いてみることもSelf-Modelingの中の1つです。
今回は、スポーツ心理学の中のSelf-Efficacyの理論と、それを応用したメンタルトレーニングの一例を書いてみました。これを読んでいただいたみなさんが、メンタルトレーニングというのは、スポーツ心理学という学問の中で構築された理論をベースに、それぞれの環境でスポーツに携わっているみなさんがクリエイティブに使えるものなんだと実感してもらえれば本望です。
みなさんはどうやって「自信」を手に入れますか?
Self-Efficacyと聞くと、かなり馴染みの薄い英単語に聞こえてしまいますが、ここはひとまず「自信」でかたづけておきましょう。まず、このSelf-Efficacyを高めるための4つの要素を紹介します。
- Past Performance(過去の体験)
- Vicarious Experience(代理的経験)
- Verbal Persuasion(口頭による説得)
- Physiological State(生理的状態)
さて、このように自信が高まったアスリートは、思考、行動、感情などの面で変化が見られます。まず、自信が高まれば、自分の能力や状況についてポジティブに捉えられます。モチベーションもだいぶ変わってきます。自信が高まったアスリートはより難しいことに挑戦しようと思えます。そして、その課題をクリアするために努力をするようになり、その努力も根気よく続けるようになります。自信が高まれば、自分の成功は自分の実力があるからだ、努力をしてきたからだと捉えられるようになり成功体験によってますますモチベーションが高まりますが、自信があまりないアスリートは自分の成功を運がよかったからだとか、相手がミスをしたからだ、と捉えるようになり、成功体験をしてもなかなか行動に変化が現れません。自信が高まれば、もちろん感情も安定してきますし、また何かに挑戦しようという気力も芽生えます。こうして、自信が高まることで思考、行動、感情の面に変化が起これば、パフォーマンスにもいい影響を及ぼすことが期待出来ますね。
さて、理論はわかったけど、実際どうやってこの理論を使えばいいの?という疑問がわいてくる頃でしょうか。ここからが理論に基づいたメンタルトレーニングを出来るかどうかの腕の見せ所です。まずは効果的な思考法を身につけましょう。この理論の一番大きな柱である「過去の成功」を体験するためには、ゴールを設定することが有効でしょう。それも、結果ではなくてプロセスに着目したゴールです。なぜならプロセスというのは結果に比べて、自分の努力次第で改善することが出来るからです。つまり自分のコントロールの及ぶ範囲だということです。例えばバッティング練習で10球のうち7球ヒットを打とう(結果)、というのと7球芯に当てよう(プロセス)というのではどこが違うでしょう?ヒットというのは、仮にいい当たりを打っても野手に捕られてしまってはなりません。つまり、目標未達になってしまいます。それでは、せっかくいい当たりをしてるのに、自信を高めることが出来なくなってしまいます。しかし、「バットの芯に当てる」というプロセスに注目することによって、外的要素(野手など)に影響されることが少なくなり、自分のパフォーマンスの精度の向上→目標達成→自信の向上ということになるわけです。
次に、自分の中で試合で行うパフォーマンスについてのリハーサルを充分にしておきましょう。つまり、自分の中で試合と全く同じ(または限りなくそれに近い)状況で「成功」を体験することで、試合での自信が高められるということです。実際、練習メニューをいかに実践に近い状況で出来るかっていうことも大きな鍵でしょう。ここテネシー大学のフットボール部の練習で、スタジアムの歓声の音を練習中にスピーカーから流しているのを見たことがあります。彼らは本番では10万人の観客の前で試合をしなければいけません。こうした準備が、本当に「試合のため」の準備だと思います。イメージトレーニングも有効な手段です。これは、自分が試合で発揮したいパフォーマンスを繰り返しイメージすることによって、「試合での成功体験」を身近に体験することが出来ます。過去に実際に成功したシーンを思い返してイメージするのもいいでしょうし、これから成功するところをイメージするのもいいでしょう。いずれにしても試合を前に「成功」をイメージしておくことは、Self-Efficacyの理論の中での「過去の成功体験」を満たすことになりますし。イメージの中で「オレは必ず成功する」というSelf-Talkも織り交ぜていけば「口頭による説得」も使うことが出来ますし、自分の成功する姿をイメージすることはもちろん「Modeling」にもなるし、成功体験をイメージすることによって「生理的状態」もよくなります。というわけで、イメージトレーニングというのはメンタルトレーニングの中でも代表的なスキルと言うわけです。
最後にModelingの効果についてもう少し書きます。Modelingの中には、他者を取り込む外的なものと、自分の姿を取り込む内的なものがあります。他者を取り込むものとしては、先ほど、自分と似た他者のパフォーマンスを見ることで自分の可能性についての自信を高めるものと言いましたが、何もパフォーマンスだけに限りません。態度や行動というのもModelingの対象になります。例えば、試合を前にして、または試合中に、監督やコーチが妙にそわそわしているのと、堂々とベンチに座っているのとでは、選手に与える影響に違いが出ます。つまり監督やコーチが堂々と自信を持って振る舞えば、その態度や行動は必ず選手に伝わるというものです。それから、自分の姿を取り込むSelf-Modelingについては、ビデオを使うのも有効な手段です。過去の成功している自分の映像を見ることによって、その時のパフォーマンス、自信がみなぎっている振る舞いが、自信を高めるのに役立つでしょう。また、ケガをしている選手が、どうしても以前のようなパフォーマンスが出来ず行き詰まっていたとします。もちろんケガの回復状況にもよりますが、過去の成功したパフォーマンスを見ることで、ケガの再発への恐怖などからもう一歩踏み出せずにいる状況から抜け出せるかもしれません。最後に、自分の中で成功へのストーリーを描くことも有効な手段です。「自分は◯◯だから成功する」というストーリーを自分の中でリアルに描いてみることもSelf-Modelingの中の1つです。
今回は、スポーツ心理学の中のSelf-Efficacyの理論と、それを応用したメンタルトレーニングの一例を書いてみました。これを読んでいただいたみなさんが、メンタルトレーニングというのは、スポーツ心理学という学問の中で構築された理論をベースに、それぞれの環境でスポーツに携わっているみなさんがクリエイティブに使えるものなんだと実感してもらえれば本望です。
みなさんはどうやって「自信」を手に入れますか?
Friday, June 01, 2007
チームの結束
長らくご無沙汰してしまいましたが、さりげなくブログを再開したいと思います 笑。今回はスポーツ、またはスポーツ心理学の中でも理屈のありそうな、なさそうな「チームワーク」について書きたいと思います。みなさんはチームワークについてどんなイメージ、感想を持っているでしょうか?よく、「このチームはチームワークがよかったので勝てた」とか聞く一方で、「チームワークが良けりゃ、勝てるのか?」などといった疑問もあると思います。さてさて、議論のしどころはたくさんあると思いますが、まず今回はスポーツ心理学のリサーチを1つ、それから自分の体験を1つ紹介したいと思います。
リサーチの出典は以下の通りです。
Holt, N.L., & Dunn, J.G.H. (2006). Guidelines for delivering personal-disclosure mutual-sharing team building interventions. The Sport Psychologist, 20, 348-367.
まずリサーチの概要ですが、このリサーチはカナダの女子サッカーチームを対象にPersonal-Disclosure Mutual-sharing (以下、PDMS)という、各々の選手が自己開示を行ってそれをチーム全体で共有するというグループセッションが 行われて、その経験を各選手にインタビューしたことをもとにまとめられました。チームのレベルとしては、何人かの選手は国際大会にも出場するような、非常に高いレベルで、実際このチームもカナダの全国大会に出場していました。このチームにはシーズン開始から4ヶ月間、スポーツ心理学コンサルタント(以下、SPC)が帯同していて、チームミーティングやら、必要に応じて個人個人にコンサルティングを行っていました。全国大会の2週間前のあるチームミーティングの日に、SPCから以下の設問について自分自身の思いを書いてくるよう宿題が出ました。
SPC自身のこの3つの問いへの「自己開示」から始まったこのPDMSセッションは、とても大きな効果を選手達にもたらしました。多くの選手が、激しく感情的になり、涙を流すものまで出て来ました。ある選手は「今まで人生で経験した事のないような素晴らしい体験だった」と述べ、他の選手は「今後何十年先もずっと忘れないだろう」と述べました。また、多くの選手は、これまで共に過ごして来たチームメートの知られざる一面を見る事が出来た、そしてそれがパフォーマンスにもいい影響を及ぼした、と言っています。面白い事に、何人かの選手は、選手として、また人間としての自己理解をも深まったと述べています。
さらに、多くの選手がこのPDMSセッションを機にチームの結びつきが深まったと感じました。そして、「自分自身のため」だけではなく、「チームメートのため」に戦うんだという意識が高まった、と言っています。実際、「チームのために自分の足が折れようが、タックルに向かう」という表現を使っている選手までいました。何人かの選手は、このセッションを境にチームとしての自信が深まり、勝利を確信するまでに至りました。「勝つのは自分たちだ!」「誰が自分たちを止められるんだ?」といった心境だったと述べています。また、自分自身への自信が深まったと感じた選手達もいました。
さて、次に自分の体験からですが、今学期Group Dynamicsというグループカウンセリングのクラスで面白い体験をしました。そのクラスは週1回、3時間で、4ヶ月間続きました。クラスには20人弱の生徒がいて、毎週、授業の後半の1時間は3つの小グループに分かれてのセッションがありました。各グループには博士課程のカウンセリングの生徒がグループリーダーとして、毎回参加していました。自分のグループには、女性5人、男性2人で、留学生は自分を入れて2人で、国籍、人種、文化、生活習慣、価値観の全く違う生徒が集まりました。セッションはたいてい、「この一週間何があったか?」といったものから、何かお題を決めて話したりしました。最初の頃は、グループ全体がぎこちなく、張りつめた雰囲気で、会話も表面的で、正直、苦痛に思う事もありました。しばらくこうした状態が続きましたが、次第に家族のことや、過去の出来事などを話すようになって少しずつ感情表現をするようになりました。ある日、「どんな話題について話してもいい」というテーマで各自話すことになりました。面白いことに、学期末の時にメンバーみんなでこのセッションの感想を1人ずつ話した時に、何人かのメンバーが「この日がターニングポイントだった」と言ったのですが、1人の女の子が自分の仲の良い男の子の気持ちがはっきりよくわからない、みたいなことを言い出しました。思わせぶりをしているような、そうでないような、という状態が続いているとのことで、最後には「何で男はいつもこうなの!」と感情を露にしました。彼女は明るい性格だったので、この話をしている時も怒っているというよりは、ちょっと面白おかしく話してたので、そこからみんなの議論が活発になり、一気に女性vs男性という構図が生まれました。この出来事の後に、グループの一体感が劇的に変わったということにはなりませんでしたが、このグループへの思い、愛着といったものが、各々何となく芽生えたような感じになりました。グループメンバーは、より自分の内面を話すようになりましたし、家族の問題、養子としての体験など、ネガティブに聞こえる体験なども話すようになり、メンバーの誰かが涙を流すといったこともありました。
この体験は、共通のゴールに向かって時間を共有する、というスポーツ現場のそれとは明らかに違うものです。このグループでは、何一つゴールは設定されず、このセッションの意図すら明らかにされませんでした。ですが、バックグランドの様々な人間が、週に1回という限られた時間を共有して、自己開示を繰り返していくうちに、何となくグループへの愛着、安心感、自己発見、他のグループメンバーへの思いなどが芽生えて来たのです。
ちなみに、グループリーダーは、いわゆるグループを一定方向に導こうとするリーダーシップとは少し違う役割で、このセッションでは、「ファシリテーター(facilitator)」という役割でした。メンバーに比較的自由に発言させて、その言動や、それに対するグループの流れ、各メンバーの反応などを観察する立場の人です。基本的には、メンバーが自ら発言するのを待ったり、仕草や反応を観察して、その人が自分の内面を出せるような環境を作る働きをしました。例えば「今日はお互いが、より踏み込んだ質問をしましょう」などとテーマを決めたこともありました。もし、積極的に発言していない人がいたら、「今日はどうしたの?」とか「何か感想はある?」といった質問をして、その人が自ら発言をするのを待ちます。そして、毎回「お題」についてはファシリテーター自らも話をしました。例えば「今週起こったいいこと、悪いこと」などと言ったお題の時は、ファシリテーターも自ら自分にどんなことが起きて、何を感じたかなどを他のメンバーと同じように話しました。ちなみに、学期が終わった後、このファシリテーター曰く、他の2つの小グループでは、このグループほどの一体感は生まれなかったそうです。実際このグループは、みんなで打ち上げをしようか、という話が持ち上がったほどでした。
自分自身の感想としては、このメンバーは今後マメに連絡をとりあう友達か、と聞かれたら、そこまでではないかもしれません。でも、お互い過去や現在の悩みや喜びを話し、自分をさらけ出して、時には声をかけあった、このグループに対してはクラス内の他のメンバーとは違う結びつきを感じたものです。実際、自分はこのグループの中の1人と、大学のスポーツの試合を見に行ったり、その生徒の卒業パーティーに顔を出したりといった仲になりました。他のメン バーからは、自分が抱えたトラブルについて自分以上に怒りを露にしてくれたことで、気持ちが楽になりました。文化の違いや、他のグループメンバーの言動、ファシリテー ターの真摯な態度を見ることで、いろいろ学んだ機会にもなりました。中でも、他者を観察すること、自分の心の変化に目を配ること、という「人」を相手に仕事をする人間、家族と一緒に生活する人間として、とても大切な行動習慣を改めて学んだという機会になりました。
さて、みなさんもスポーツチーム、スポーツ以外のグループの中で、一体感、愛着、他人への思い、自己発見といったポジティブなものから、争い、対立といったネガティブなものなど様々な体験をしたことがあると思います。チーム内の個人個人の言動が、チーム全体の流れに影響を及ぼし、またチーム全体の変化が個人個人の感情や心境に影響を及ぼす、そんな体験をしたことがあるかと思います。チームの結束が深まった、または弱まった体験、リーダーシップ論などなど、お待ちしております。
リサーチの出典は以下の通りです。
Holt, N.L., & Dunn, J.G.H. (2006). Guidelines for delivering personal-disclosure mutual-sharing team building interventions. The Sport Psychologist, 20, 348-367.
まずリサーチの概要ですが、このリサーチはカナダの女子サッカーチームを対象にPersonal-Disclosure Mutual-sharing (以下、PDMS)という、各々の選手が自己開示を行ってそれをチーム全体で共有するというグループセッションが 行われて、その経験を各選手にインタビューしたことをもとにまとめられました。チームのレベルとしては、何人かの選手は国際大会にも出場するような、非常に高いレベルで、実際このチームもカナダの全国大会に出場していました。このチームにはシーズン開始から4ヶ月間、スポーツ心理学コンサルタント(以下、SPC)が帯同していて、チームミーティングやら、必要に応じて個人個人にコンサルティングを行っていました。全国大会の2週間前のあるチームミーティングの日に、SPCから以下の設問について自分自身の思いを書いてくるよう宿題が出ました。
- なぜ、自分はサッカーをするのか?
- 誰のためにプレーするのか?
- 全国大会において、自分はこのチームに何が出来るか?
SPC自身のこの3つの問いへの「自己開示」から始まったこのPDMSセッションは、とても大きな効果を選手達にもたらしました。多くの選手が、激しく感情的になり、涙を流すものまで出て来ました。ある選手は「今まで人生で経験した事のないような素晴らしい体験だった」と述べ、他の選手は「今後何十年先もずっと忘れないだろう」と述べました。また、多くの選手は、これまで共に過ごして来たチームメートの知られざる一面を見る事が出来た、そしてそれがパフォーマンスにもいい影響を及ぼした、と言っています。面白い事に、何人かの選手は、選手として、また人間としての自己理解をも深まったと述べています。
さらに、多くの選手がこのPDMSセッションを機にチームの結びつきが深まったと感じました。そして、「自分自身のため」だけではなく、「チームメートのため」に戦うんだという意識が高まった、と言っています。実際、「チームのために自分の足が折れようが、タックルに向かう」という表現を使っている選手までいました。何人かの選手は、このセッションを境にチームとしての自信が深まり、勝利を確信するまでに至りました。「勝つのは自分たちだ!」「誰が自分たちを止められるんだ?」といった心境だったと述べています。また、自分自身への自信が深まったと感じた選手達もいました。
さて、次に自分の体験からですが、今学期Group Dynamicsというグループカウンセリングのクラスで面白い体験をしました。そのクラスは週1回、3時間で、4ヶ月間続きました。クラスには20人弱の生徒がいて、毎週、授業の後半の1時間は3つの小グループに分かれてのセッションがありました。各グループには博士課程のカウンセリングの生徒がグループリーダーとして、毎回参加していました。自分のグループには、女性5人、男性2人で、留学生は自分を入れて2人で、国籍、人種、文化、生活習慣、価値観の全く違う生徒が集まりました。セッションはたいてい、「この一週間何があったか?」といったものから、何かお題を決めて話したりしました。最初の頃は、グループ全体がぎこちなく、張りつめた雰囲気で、会話も表面的で、正直、苦痛に思う事もありました。しばらくこうした状態が続きましたが、次第に家族のことや、過去の出来事などを話すようになって少しずつ感情表現をするようになりました。ある日、「どんな話題について話してもいい」というテーマで各自話すことになりました。面白いことに、学期末の時にメンバーみんなでこのセッションの感想を1人ずつ話した時に、何人かのメンバーが「この日がターニングポイントだった」と言ったのですが、1人の女の子が自分の仲の良い男の子の気持ちがはっきりよくわからない、みたいなことを言い出しました。思わせぶりをしているような、そうでないような、という状態が続いているとのことで、最後には「何で男はいつもこうなの!」と感情を露にしました。彼女は明るい性格だったので、この話をしている時も怒っているというよりは、ちょっと面白おかしく話してたので、そこからみんなの議論が活発になり、一気に女性vs男性という構図が生まれました。この出来事の後に、グループの一体感が劇的に変わったということにはなりませんでしたが、このグループへの思い、愛着といったものが、各々何となく芽生えたような感じになりました。グループメンバーは、より自分の内面を話すようになりましたし、家族の問題、養子としての体験など、ネガティブに聞こえる体験なども話すようになり、メンバーの誰かが涙を流すといったこともありました。
この体験は、共通のゴールに向かって時間を共有する、というスポーツ現場のそれとは明らかに違うものです。このグループでは、何一つゴールは設定されず、このセッションの意図すら明らかにされませんでした。ですが、バックグランドの様々な人間が、週に1回という限られた時間を共有して、自己開示を繰り返していくうちに、何となくグループへの愛着、安心感、自己発見、他のグループメンバーへの思いなどが芽生えて来たのです。
ちなみに、グループリーダーは、いわゆるグループを一定方向に導こうとするリーダーシップとは少し違う役割で、このセッションでは、「ファシリテーター(facilitator)」という役割でした。メンバーに比較的自由に発言させて、その言動や、それに対するグループの流れ、各メンバーの反応などを観察する立場の人です。基本的には、メンバーが自ら発言するのを待ったり、仕草や反応を観察して、その人が自分の内面を出せるような環境を作る働きをしました。例えば「今日はお互いが、より踏み込んだ質問をしましょう」などとテーマを決めたこともありました。もし、積極的に発言していない人がいたら、「今日はどうしたの?」とか「何か感想はある?」といった質問をして、その人が自ら発言をするのを待ちます。そして、毎回「お題」についてはファシリテーター自らも話をしました。例えば「今週起こったいいこと、悪いこと」などと言ったお題の時は、ファシリテーターも自ら自分にどんなことが起きて、何を感じたかなどを他のメンバーと同じように話しました。ちなみに、学期が終わった後、このファシリテーター曰く、他の2つの小グループでは、このグループほどの一体感は生まれなかったそうです。実際このグループは、みんなで打ち上げをしようか、という話が持ち上がったほどでした。
自分自身の感想としては、このメンバーは今後マメに連絡をとりあう友達か、と聞かれたら、そこまでではないかもしれません。でも、お互い過去や現在の悩みや喜びを話し、自分をさらけ出して、時には声をかけあった、このグループに対してはクラス内の他のメンバーとは違う結びつきを感じたものです。実際、自分はこのグループの中の1人と、大学のスポーツの試合を見に行ったり、その生徒の卒業パーティーに顔を出したりといった仲になりました。他のメン バーからは、自分が抱えたトラブルについて自分以上に怒りを露にしてくれたことで、気持ちが楽になりました。文化の違いや、他のグループメンバーの言動、ファシリテー ターの真摯な態度を見ることで、いろいろ学んだ機会にもなりました。中でも、他者を観察すること、自分の心の変化に目を配ること、という「人」を相手に仕事をする人間、家族と一緒に生活する人間として、とても大切な行動習慣を改めて学んだという機会になりました。
さて、みなさんもスポーツチーム、スポーツ以外のグループの中で、一体感、愛着、他人への思い、自己発見といったポジティブなものから、争い、対立といったネガティブなものなど様々な体験をしたことがあると思います。チーム内の個人個人の言動が、チーム全体の流れに影響を及ぼし、またチーム全体の変化が個人個人の感情や心境に影響を及ぼす、そんな体験をしたことがあるかと思います。チームの結束が深まった、または弱まった体験、リーダーシップ論などなど、お待ちしております。
Tuesday, September 26, 2006
Achievement Goal Theory
前回はモチベーションについて書きましたが、今回はその続編で、Achievement Goal Theoryというのを紹介したいと思います。この理論はパフォーマンスに影響を与えうる3つの要素、Goal orientation, Perceived competence, Achievement behavior、がいかにそれぞれ関係しているかということを説明しています。この3つの要素はそれぞれ、以下のように分類されます。
パフォーマンス
Task orientedな選手は、自分が取り組んでいる課題や、自分の技術を伸ばすことにフォーカスしています。そのため、自己記録の更新や、自分の課題をクリアすることで達成感を感じます。自分の能力は変化するものだと捉えていて、成功は努力によってもたらされると考えています。達成したか否かというのは自分の中の基準(自己記録など)によって決まります。
一方で、Ego orientedな選手は自分が他者より優れているかどうか、ということにフォーカスしています。能力は生まれつき決まっていて、成功は持って生まれた能力によって決まると考えています。達成感は自分が他者より優っている、または、他者より少ない努力で同等の成果をあげた、と認識することによってもたらされます。
当然、Task orientedとEgo orientedの選手には行動に違いが出ます。例えば、Task orientedの選手は新しい技術や戦術を身につけることに関心を持っているので、より高いレベルの課題を選ぶ傾向にあります。能力は変化しうると捉えていて、かつ成功は努力によってもたらされると考えているので、目標達成のために努力を惜しまず、辛抱強く挑戦を続けます。このタイプの選手は、自分の課題をクリアしたり、過去の記録を更新することで達成感を感じるので、往々にしてポジティブで、高い自信を持っていられます。
一方、Ego orientedな選手は自分の能力が高いと感じている時(HPC: High Perceived Competence)と、低いと感じている時(LPC: Low Perceived Competence)で、行動に違いが出ます。自分に能力 があると感じているアスリートは、自分に能力があることを見せつけたいため、比較的簡単な課題を選びます。達成のための努力はあまりしません、なぜなら彼らは能力は生まれつき備わっているものと捉えてて、自分には能力があるというところを見せたいからです。彼らは自分の課題が成功しそうだと思っているうちは、逆境にも耐えられますが、一旦雲行きが怪しくなると、その忍耐力はもろいです。セルフイメージはポジティブで、自信も持てていますが、同時にもろさも兼ね備えています。
しかし、Ego orientedの選手が自分に能力を感じていないとき、彼らは極端に高いレベルか極端に低いレベルを選びます。なぜなら、極端に低いレベルなら必ず成功が期待出来るし、極端に高いレベルなら、失敗しても他の選手も同様に失敗する可能性があるので、自分が能力不足だと見られる危険性が少ないからです。このタイプのアスリートは、他者との競争の中で自分を見てる上に、自分の能力に自信がないため、自己疑念を抱きやすく、セルフイメージもネガティブで、努力や辛抱強さも期待出来ません。
現実問題、アスリートは内発的、外発的モチベーションと同じように、このTask、Egoも両方持っていると言えるでしょう。しかし、Ego orientedに偏ったアスリートは、自分の能力が高いと感じているうちは、行動やパフォーマンスに悪影響は及ばさないかもしれませんが、彼らは常に他者との比較で自己を評価する傾向があります。つまり、たとえ自己ベストを出したり、以前より技術や記録が進歩したとしても達成感を得られない可能性があるということです。なぜなら、自分がベストを尽くしても相手がそれより優っていたら、結果としては相手に敗れることになるからです。そのためEgo orientedの選手は、自信を失う危険性が高く、努力や忍耐力を見せることもなくなって、ついにはパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性が出てきます。
この理論は、指導者には大いに参考になるところだと思います。実際、勝負の世界では「こいつに負けてたまるか」というEgoの部分があるのは当然ですが、長い競技生活、常に相手に勝てるとは限りません。特に、相手のパフォーマンスは自分達のコントロール出来ない範疇であり、自分達がコントロール出来るものは努力であったり、プロセスであったりするので、日頃から、チームとしても、個人としてもTaskにフォーカスした目標を設定したり、個々の選手がそれぞれのレベルで進歩を見せたらポジティブなフィードバックを与える必要があるでしょう。
実際問題、スポーツ現場でこの理論を応用するとしたら、「オマエはEgoだからTaskにしろ」というようなアプローチではなく、Egoのアスリートが、自信を失ったり、ネガティブな感情を持ったりする危険性を軽減するために、監督、コーチがTaskにフォーカスしたアプローチを浸透させるという形になるでしょう。例えば、試合には負けたけど、ディフェンス面ではダブルプレーを3つ決めたので、その点は内野手の守備力向上に対してプラスの評価をする、とか、今日は内野でいくつかのエラーが出たけど、いずれも外野手の素早いバックアップのおかげで傷口が最小限で済んだとなれば、外野手のカバーリングへの姿勢を評価するべきでしょう。
さて、今回もモチベーションに関わるトピックで書いてきましたが、いかがだったでしょうか?前回の内発的、外発的の話よりちょっと複雑だったかもしれませんが、アスリートの行動パターンを把握するには、意外と役に立つ理論だと思います。いつものように、素朴な疑問やコメントをお待ちしています。
- Goal orientation(目標の指向性)
- Task (Mastery) oriented goal
- Ego (Outcome) oriented goal
- Perceived competence(自分で認識している能力)
- High perceived competence
- Low perceived competence
- Achievement behavior(行動)
- Effort(努力)
- Persistence(忍耐力)
- Task choice(取り組む課題の選択)
パフォーマンス
Task orientedな選手は、自分が取り組んでいる課題や、自分の技術を伸ばすことにフォーカスしています。そのため、自己記録の更新や、自分の課題をクリアすることで達成感を感じます。自分の能力は変化するものだと捉えていて、成功は努力によってもたらされると考えています。達成したか否かというのは自分の中の基準(自己記録など)によって決まります。
一方で、Ego orientedな選手は自分が他者より優れているかどうか、ということにフォーカスしています。能力は生まれつき決まっていて、成功は持って生まれた能力によって決まると考えています。達成感は自分が他者より優っている、または、他者より少ない努力で同等の成果をあげた、と認識することによってもたらされます。
当然、Task orientedとEgo orientedの選手には行動に違いが出ます。例えば、Task orientedの選手は新しい技術や戦術を身につけることに関心を持っているので、より高いレベルの課題を選ぶ傾向にあります。能力は変化しうると捉えていて、かつ成功は努力によってもたらされると考えているので、目標達成のために努力を惜しまず、辛抱強く挑戦を続けます。このタイプの選手は、自分の課題をクリアしたり、過去の記録を更新することで達成感を感じるので、往々にしてポジティブで、高い自信を持っていられます。
一方、Ego orientedな選手は自分の能力が高いと感じている時(HPC: High Perceived Competence)と、低いと感じている時(LPC: Low Perceived Competence)で、行動に違いが出ます。自分に能力 があると感じているアスリートは、自分に能力があることを見せつけたいため、比較的簡単な課題を選びます。達成のための努力はあまりしません、なぜなら彼らは能力は生まれつき備わっているものと捉えてて、自分には能力があるというところを見せたいからです。彼らは自分の課題が成功しそうだと思っているうちは、逆境にも耐えられますが、一旦雲行きが怪しくなると、その忍耐力はもろいです。セルフイメージはポジティブで、自信も持てていますが、同時にもろさも兼ね備えています。
しかし、Ego orientedの選手が自分に能力を感じていないとき、彼らは極端に高いレベルか極端に低いレベルを選びます。なぜなら、極端に低いレベルなら必ず成功が期待出来るし、極端に高いレベルなら、失敗しても他の選手も同様に失敗する可能性があるので、自分が能力不足だと見られる危険性が少ないからです。このタイプのアスリートは、他者との競争の中で自分を見てる上に、自分の能力に自信がないため、自己疑念を抱きやすく、セルフイメージもネガティブで、努力や辛抱強さも期待出来ません。
現実問題、アスリートは内発的、外発的モチベーションと同じように、このTask、Egoも両方持っていると言えるでしょう。しかし、Ego orientedに偏ったアスリートは、自分の能力が高いと感じているうちは、行動やパフォーマンスに悪影響は及ばさないかもしれませんが、彼らは常に他者との比較で自己を評価する傾向があります。つまり、たとえ自己ベストを出したり、以前より技術や記録が進歩したとしても達成感を得られない可能性があるということです。なぜなら、自分がベストを尽くしても相手がそれより優っていたら、結果としては相手に敗れることになるからです。そのためEgo orientedの選手は、自信を失う危険性が高く、努力や忍耐力を見せることもなくなって、ついにはパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性が出てきます。
この理論は、指導者には大いに参考になるところだと思います。実際、勝負の世界では「こいつに負けてたまるか」というEgoの部分があるのは当然ですが、長い競技生活、常に相手に勝てるとは限りません。特に、相手のパフォーマンスは自分達のコントロール出来ない範疇であり、自分達がコントロール出来るものは努力であったり、プロセスであったりするので、日頃から、チームとしても、個人としてもTaskにフォーカスした目標を設定したり、個々の選手がそれぞれのレベルで進歩を見せたらポジティブなフィードバックを与える必要があるでしょう。
実際問題、スポーツ現場でこの理論を応用するとしたら、「オマエはEgoだからTaskにしろ」というようなアプローチではなく、Egoのアスリートが、自信を失ったり、ネガティブな感情を持ったりする危険性を軽減するために、監督、コーチがTaskにフォーカスしたアプローチを浸透させるという形になるでしょう。例えば、試合には負けたけど、ディフェンス面ではダブルプレーを3つ決めたので、その点は内野手の守備力向上に対してプラスの評価をする、とか、今日は内野でいくつかのエラーが出たけど、いずれも外野手の素早いバックアップのおかげで傷口が最小限で済んだとなれば、外野手のカバーリングへの姿勢を評価するべきでしょう。
さて、今回もモチベーションに関わるトピックで書いてきましたが、いかがだったでしょうか?前回の内発的、外発的の話よりちょっと複雑だったかもしれませんが、アスリートの行動パターンを把握するには、意外と役に立つ理論だと思います。いつものように、素朴な疑問やコメントをお待ちしています。
Friday, September 15, 2006
なぜスポーツに向かうのか?
みなさんご無沙汰してます。
週一回は更新します、と豪語してからはや1ヶ月。月日が経つのは早いもんですねぇ。さて、張り切って再開したいと思います 笑
ところで、みなさんはなぜスポーツに向かうのでしょうか?この問いにはいろんな答えがあるでしょう。「好きだから」というシンプルなものから、「勝負ごとで他人に勝ちたい」、「目立ちたい」、「難しい技が出来るようになりたい」などいろいろな要素があるでしょう。つまり、この「なぜ?」という問いの答えがモチベーションなわけです。 実際には、この「なぜ(Why)?」に「どのくらい(How much)?」を加えて、その選手のモチベーションの方向性や程度を把握することになりますが、今回はその「なぜ(Why)?」を分析していきましょう。
では、そのなぜ(Why)ですが、「競技そのものが好きだから」、「競技そのものが楽しいから」という選手は内発的動機(Intrinsic Motivation:IM)によって競技に取り組んでいることになります。それに対して、外発的動機(Extrinsic Motivation:EM)があって、このEMはさらに外的規制(External Regulation)、取り入れ(Introjected Regulation)、同一視(Identified Regulation)の3つに分けられます。それぞれ説明しますと、
今までのところを表にまとめますと
では、外発的動機(EM)はダメなのか?ということですが、必ずしもそうとは限りません。例えば、外発的動機(EM)によって、その選手が自分の能力(Competence)を認識出来る場合、例えば、スポーツ奨学金をもらうことによって、選手が自分の実力を客観的に捉えられるような場合などは、外発的動機(EM)はその選手の内発的動機(IM)を助長する働きが期待出来ます。しかし、選手が「奨学金をもらうために頑張る」というふうになってしまった場合は、報酬のために競技に取り組んでいるということになるので、自己決定(Self-determination)が弱まった行動になってしまい、つまり内発的動機(IM)を阻害することになってしまいます。
さて、みなさんがスポーツに向かう理由はなんでしょうか?
追:今回は少し専門用語が多くなってしまいました。当然、読者にわかりやすく伝えられるように努力をしたつもりですが、実際どんなもんでしょう?このブログは読者の方とボク、または読者同士の書き込みのキャッチボールで成り立っているものなので、わからないところ、リクエストなどがあったら遠慮なくコメントして下さい。
追2:この書き込みは基本的には今、授業でやってる教科書の内容をベースにしていますが、専門用語の日本語訳には「スポーツ心理学 ハンドブック 上田雅夫」(2000、実務教育出版)を使わせてもらっています。もし、対訳が不適当だと気がついた方は是非お知らせください。
ちなみに教科書: Williams, J. M. (2006). Applied sport psychology: Personal growth to peak performance (5th ed.). McGraw-Hill.
週一回は更新します、と豪語してからはや1ヶ月。月日が経つのは早いもんですねぇ。さて、張り切って再開したいと思います 笑
ところで、みなさんはなぜスポーツに向かうのでしょうか?この問いにはいろんな答えがあるでしょう。「好きだから」というシンプルなものから、「勝負ごとで他人に勝ちたい」、「目立ちたい」、「難しい技が出来るようになりたい」などいろいろな要素があるでしょう。つまり、この「なぜ?」という問いの答えがモチベーションなわけです。 実際には、この「なぜ(Why)?」に「どのくらい(How much)?」を加えて、その選手のモチベーションの方向性や程度を把握することになりますが、今回はその「なぜ(Why)?」を分析していきましょう。
では、そのなぜ(Why)ですが、「競技そのものが好きだから」、「競技そのものが楽しいから」という選手は内発的動機(Intrinsic Motivation:IM)によって競技に取り組んでいることになります。それに対して、外発的動機(Extrinsic Motivation:EM)があって、このEMはさらに外的規制(External Regulation)、取り入れ(Introjected Regulation)、同一視(Identified Regulation)の3つに分けられます。それぞれ説明しますと、
- 外的規制(External Regulation)とは、外部の報酬、お金や賞品によって動機づけされることです。
- 取り入れ(Introjected Regulation)とは、自分の中で「〜しなきゃいけない」と思うことから競技に取り組みます。これは一見IMに見えますが、結局、自分の中で自分に課したルールのようなものに左右されているのでEMになります。このタイプの選手は、もし練習をサボると罪悪感を感じるので、練習に向かいます。
- 同一視(Identified Regulation)とは、自分から取り組んではいるのですが、そこには楽しみや喜びを見いだせていない状態で、単にかっこいいからといったような理由で競技に取り組んでいます。
今までのところを表にまとめますと
- 非動機づけ(Amotivation)
- 外発的動機(Extrinsic Motivation)
- 外的(External Regulation)
- 取り込み(Introjected Regulation)
- 同一視(Identified Regulation)
- 内発的動機(Intrinsic Motivation)
- コンピテンス(≒能力:Competence)
- 自律性(Autonomy)
- 他者との結びつき(Relatedness)
では、外発的動機(EM)はダメなのか?ということですが、必ずしもそうとは限りません。例えば、外発的動機(EM)によって、その選手が自分の能力(Competence)を認識出来る場合、例えば、スポーツ奨学金をもらうことによって、選手が自分の実力を客観的に捉えられるような場合などは、外発的動機(EM)はその選手の内発的動機(IM)を助長する働きが期待出来ます。しかし、選手が「奨学金をもらうために頑張る」というふうになってしまった場合は、報酬のために競技に取り組んでいるということになるので、自己決定(Self-determination)が弱まった行動になってしまい、つまり内発的動機(IM)を阻害することになってしまいます。
さて、みなさんがスポーツに向かう理由はなんでしょうか?
追:今回は少し専門用語が多くなってしまいました。当然、読者にわかりやすく伝えられるように努力をしたつもりですが、実際どんなもんでしょう?このブログは読者の方とボク、または読者同士の書き込みのキャッチボールで成り立っているものなので、わからないところ、リクエストなどがあったら遠慮なくコメントして下さい。
追2:この書き込みは基本的には今、授業でやってる教科書の内容をベースにしていますが、専門用語の日本語訳には「スポーツ心理学 ハンドブック 上田雅夫」(2000、実務教育出版)を使わせてもらっています。もし、対訳が不適当だと気がついた方は是非お知らせください。
ちなみに教科書: Williams, J. M. (2006). Applied sport psychology: Personal growth to peak performance (5th ed.). McGraw-Hill.
Wednesday, August 09, 2006
ちょいと連絡事項
このブログを読んでくれてる皆さん、いつもありがとうございます。
熱心に投稿してくれてるみなさんには、本当に感謝しています。
ところで、皆さんの中には「このブログ、一体どのくらいのペースで更新されるんだ?」って思ってる方がたくさんいると思います。「毎日のぞいてみてはいるけれど、いっこうに更新されてないから、もーやーめた」なんて人も出てきたかもしれない、と心配になって少し調べてみたら、このブログに更新をお知らせする機能がどうやらあるようなんです。仕組みはどうも、googleなどでメーリングリストを作って、そこに管理者であるボクがみなさんのメールアドレスを登録すると、ブログが更新されるごとにそのリストに、「更新しました」という情報が流れるみたいなんです。なぜそんなまどろっこしいのかというと更新をお知らせする機能は着いているものの、登録出来るメルアドは1つのみということなんです。「何か便利なようで、不便だな〜」って感じですが。なので、複数の人にお知らせするにはメーリングリストを作るしか手段がないということです。まあなにぶん機械音痴なもんで、またちがう方法を見つけたらその都度ご連絡します。
なので、更新通知をご希望の方は、直接書き込んでもらってもいいですし、メールでもいいですし、ご連絡ください。今のところ読者はみんな知り合いの人って勝手に決めつけてるんで、あえてメルアドなんかもこの場で公開していませんが、万が一通りすがりの方で、更新通知をご希望の方がいらっしゃいましたら、その旨書き込みをお願いします。
ちなみに、このブログはこちらの一方的な書き込みだけではなくて、みなさんと議論することも目的の一つなので、更新は週一回をメドにしています。
では、今後ともよろしくお願いします。
ご意見ご要望などもありましたら、何なりと。
貴
熱心に投稿してくれてるみなさんには、本当に感謝しています。
ところで、皆さんの中には「このブログ、一体どのくらいのペースで更新されるんだ?」って思ってる方がたくさんいると思います。「毎日のぞいてみてはいるけれど、いっこうに更新されてないから、もーやーめた」なんて人も出てきたかもしれない、と心配になって少し調べてみたら、このブログに更新をお知らせする機能がどうやらあるようなんです。仕組みはどうも、googleなどでメーリングリストを作って、そこに管理者であるボクがみなさんのメールアドレスを登録すると、ブログが更新されるごとにそのリストに、「更新しました」という情報が流れるみたいなんです。なぜそんなまどろっこしいのかというと更新をお知らせする機能は着いているものの、登録出来るメルアドは1つのみということなんです。「何か便利なようで、不便だな〜」って感じですが。なので、複数の人にお知らせするにはメーリングリストを作るしか手段がないということです。まあなにぶん機械音痴なもんで、またちがう方法を見つけたらその都度ご連絡します。
なので、更新通知をご希望の方は、直接書き込んでもらってもいいですし、メールでもいいですし、ご連絡ください。今のところ読者はみんな知り合いの人って勝手に決めつけてるんで、あえてメルアドなんかもこの場で公開していませんが、万が一通りすがりの方で、更新通知をご希望の方がいらっしゃいましたら、その旨書き込みをお願いします。
ちなみに、このブログはこちらの一方的な書き込みだけではなくて、みなさんと議論することも目的の一つなので、更新は週一回をメドにしています。
では、今後ともよろしくお願いします。
ご意見ご要望などもありましたら、何なりと。
貴
Sunday, July 30, 2006
メンタルの強さ
これまでスポーツにおける成功とか、スポーツと人間的成長などについて議論を繰り広げてきました。これらのトピックは、スポーツや他のパフォーマンスに携わる人間にとって、半永久的なテーマでもあり、状況や環境、成長段階によって変わるものでもあると思うので、このブログを読んでくれてるみなさんが何か思うことがあれば、いつでも書き込んでください。考えや意見がまとまらなくても書くことによって少し整理されたり、他の人に意見を聞くことによって自分の考えがまとまることもあると思うので、気軽に書いてみてください。
さて、今回はスポーツ心理学の本体に少し近づいたトピックを投げてみたいと思います。
「メンタルの強さとは?」
おいおい、これまた曖昧なトピックだなーと思ってる人も多いことでしょう。ですが、物事の大切なことの一つに正解、不正解のないものを考え抜くこと、というのが挙げられると思います。過去の書き込みにも「自分の哲学」というフレーズがありましたが、こういうシンプルだけど、答えのないものを考えるというのは、自分の哲学を作り上げるのにいいアプローチだと思います。そんなことどうでもいいって人は、ぜひこの簡単な問いかけについて気軽に考えてみてください。ちなみに今回のこのトピックも例によって正解、不正解の類いのものではありません。ただ、パフォーマンスに関わるみなさんが、さらにメンタルに興味のあるみなさんが考える「メンタルの強さ」について少しでも言葉にしてもらえたら、それで十分です。それは、自分の理想でもいいし、自分の中にすでに持っている何かでもいいし、誰か好きなアスリートや他のパフォーマーが持っているものでも何でもいいです。
さて、手始めに自分から「メンタルの強さ」について思うところを書いてみます。自分の競技生活を振り返って、またいろいろなアスリートを見聞きする中で、「メンタルの強さ」を表す性質で、今特に大切だと思うものは2つあります。
「継続性」と「一貫性」
例えば、勝負どころや土壇場で周りがびっくりするような成果を出しているアスリートがいます。ですが、それはたいていの場合、びっくりしているのは周りであって、本人はびっくりしていません(まあ稀に「自分でもびっくりです」なんてこともあるけど)。なぜなら、本人は日頃からそのための準備をしているから。つまり本人達にしてみれば、日頃やっていることを、勝負どころや土壇場でもやっているにすぎないのです。
それなら「オレだっていつも一生懸命練習してる」って言う人もいると思います。では、本当に常日頃、1時間1時間、一分一秒コツコツと練習している人がどれだけいるのでしょうか?もし毎日30分、練習で手を抜く人がいたら、その人は毎日30分ずつ人から遅れていくことになるわけです。練習場に来てても「今日はやる気がしない」と言って練習中、上の空になってしまっても、それはコツコツとは言いがたいですね。それが、1ヶ月、1年と経つと、どれだけの差になるかは想像出来ますよね。
アスリートも大人になればなるほど、スポーツ以外のところでやらなくてはいけないことが増えてきます。仕事だったり、学業だったり、家庭だったり。誘惑も増えてくるでしょうし、断れない用事もあるでしょう。そんな中で、「毎日コツコツ」というのが実はどれだけ価値のあることかというのは理解出来るでしょう。「継続は力なり」というのは見事に的を得た諺だなっていつも思います。
ひとつエピソードを紹介したいと思います。これは女子柔道でオリンピック3大会でメダルを獲得した田辺陽子選手の話なんですが、あるとき、彼女が自分の所属しているミキハウスの木村社長と会食をしてたそうです。しかし夜も更けてきたころ、就寝時間なども徹底して自己管理していた彼女は途中で帰ってしまったそうです。自分の所属する会社の社長との会食中にです。おそらく彼女の行為は賛否両論でしょう。しかし、彼女は柔道で成功するために自分のコンディショニング、生活のリズムを優先させたのです。この話は、彼女のように自分が決めたことを継続する執念が土壇場で大きな力になるのだろうという気にさせてくれるとともに、何かを継続することは簡単ではないということを感じてしまうエピソードだと思います。
次に、「一貫性」についてですが、これは「どういう練習をしているか?」ということです。練習はまぎれもなく試合のためにあるものであって、「試合でこういうプレーをしたい」ということを練習に反映させることが必要です。それは技術練習であったり、フィジカルなものかもしれないし、このブログでも取り上げていく、メンタル的なものかもしれません。ただ、練習→試合という流れが常に一貫したものである必要があります。よく「練習のための練習」という言葉を使いますが、試合でよりいいパフォーマンスをしたいのであれば、どういう練習をするべきかというのを突き詰めて考える必要があります。それには、数多くのアプローチが存在すると思いますが、その中から自分に合った効果的なものを選ぶには試行錯誤する必要があるでしょう。実際、時間のかかる作業です。あれこれ試すのは大切なことですが、例え練習メニューを変えていったとしても、最終的には自分の中で一貫したものを築く必要があります。「自分はこういう練習をこれだけやってきたので、試合でこういうパフォーマンスが出来るんだ」と言えることは勝負のかかった場面で確固たる自信を持ち続けるために、一番の支えになるものです。すべては試合の一瞬まで線でつながっているのであって、一瞬の勝負どころも毎日の継続の中の一点でしかない、ということです。
結局のところ、自分にとって「メンタルの強さ」というのは、パフォーマンスを行う一瞬の状態を指すものではなくて、その一瞬を作り出す日々の中に表れる性質だと思います。勝負の一瞬という「点」までを結ぶ日々の無数の点が積み重なることで、力強い一本の線になるというイメージです。
さて、これはあくまで自分が思っているところの「メンタルの強さ」です。みなさんはどうやって「メンタルの強さ」を言葉にできますか?
さて、今回はスポーツ心理学の本体に少し近づいたトピックを投げてみたいと思います。
「メンタルの強さとは?」
おいおい、これまた曖昧なトピックだなーと思ってる人も多いことでしょう。ですが、物事の大切なことの一つに正解、不正解のないものを考え抜くこと、というのが挙げられると思います。過去の書き込みにも「自分の哲学」というフレーズがありましたが、こういうシンプルだけど、答えのないものを考えるというのは、自分の哲学を作り上げるのにいいアプローチだと思います。そんなことどうでもいいって人は、ぜひこの簡単な問いかけについて気軽に考えてみてください。ちなみに今回のこのトピックも例によって正解、不正解の類いのものではありません。ただ、パフォーマンスに関わるみなさんが、さらにメンタルに興味のあるみなさんが考える「メンタルの強さ」について少しでも言葉にしてもらえたら、それで十分です。それは、自分の理想でもいいし、自分の中にすでに持っている何かでもいいし、誰か好きなアスリートや他のパフォーマーが持っているものでも何でもいいです。
さて、手始めに自分から「メンタルの強さ」について思うところを書いてみます。自分の競技生活を振り返って、またいろいろなアスリートを見聞きする中で、「メンタルの強さ」を表す性質で、今特に大切だと思うものは2つあります。
「継続性」と「一貫性」
例えば、勝負どころや土壇場で周りがびっくりするような成果を出しているアスリートがいます。ですが、それはたいていの場合、びっくりしているのは周りであって、本人はびっくりしていません(まあ稀に「自分でもびっくりです」なんてこともあるけど)。なぜなら、本人は日頃からそのための準備をしているから。つまり本人達にしてみれば、日頃やっていることを、勝負どころや土壇場でもやっているにすぎないのです。
それなら「オレだっていつも一生懸命練習してる」って言う人もいると思います。では、本当に常日頃、1時間1時間、一分一秒コツコツと練習している人がどれだけいるのでしょうか?もし毎日30分、練習で手を抜く人がいたら、その人は毎日30分ずつ人から遅れていくことになるわけです。練習場に来てても「今日はやる気がしない」と言って練習中、上の空になってしまっても、それはコツコツとは言いがたいですね。それが、1ヶ月、1年と経つと、どれだけの差になるかは想像出来ますよね。
アスリートも大人になればなるほど、スポーツ以外のところでやらなくてはいけないことが増えてきます。仕事だったり、学業だったり、家庭だったり。誘惑も増えてくるでしょうし、断れない用事もあるでしょう。そんな中で、「毎日コツコツ」というのが実はどれだけ価値のあることかというのは理解出来るでしょう。「継続は力なり」というのは見事に的を得た諺だなっていつも思います。
ひとつエピソードを紹介したいと思います。これは女子柔道でオリンピック3大会でメダルを獲得した田辺陽子選手の話なんですが、あるとき、彼女が自分の所属しているミキハウスの木村社長と会食をしてたそうです。しかし夜も更けてきたころ、就寝時間なども徹底して自己管理していた彼女は途中で帰ってしまったそうです。自分の所属する会社の社長との会食中にです。おそらく彼女の行為は賛否両論でしょう。しかし、彼女は柔道で成功するために自分のコンディショニング、生活のリズムを優先させたのです。この話は、彼女のように自分が決めたことを継続する執念が土壇場で大きな力になるのだろうという気にさせてくれるとともに、何かを継続することは簡単ではないということを感じてしまうエピソードだと思います。
次に、「一貫性」についてですが、これは「どういう練習をしているか?」ということです。練習はまぎれもなく試合のためにあるものであって、「試合でこういうプレーをしたい」ということを練習に反映させることが必要です。それは技術練習であったり、フィジカルなものかもしれないし、このブログでも取り上げていく、メンタル的なものかもしれません。ただ、練習→試合という流れが常に一貫したものである必要があります。よく「練習のための練習」という言葉を使いますが、試合でよりいいパフォーマンスをしたいのであれば、どういう練習をするべきかというのを突き詰めて考える必要があります。それには、数多くのアプローチが存在すると思いますが、その中から自分に合った効果的なものを選ぶには試行錯誤する必要があるでしょう。実際、時間のかかる作業です。あれこれ試すのは大切なことですが、例え練習メニューを変えていったとしても、最終的には自分の中で一貫したものを築く必要があります。「自分はこういう練習をこれだけやってきたので、試合でこういうパフォーマンスが出来るんだ」と言えることは勝負のかかった場面で確固たる自信を持ち続けるために、一番の支えになるものです。すべては試合の一瞬まで線でつながっているのであって、一瞬の勝負どころも毎日の継続の中の一点でしかない、ということです。
結局のところ、自分にとって「メンタルの強さ」というのは、パフォーマンスを行う一瞬の状態を指すものではなくて、その一瞬を作り出す日々の中に表れる性質だと思います。勝負の一瞬という「点」までを結ぶ日々の無数の点が積み重なることで、力強い一本の線になるというイメージです。
さて、これはあくまで自分が思っているところの「メンタルの強さ」です。みなさんはどうやって「メンタルの強さ」を言葉にできますか?
Friday, July 14, 2006
アスリートと人間的成長
前回はスポーツにおける成功とは?という議論から何となく人生全般における話へと発展していきましたが、今回も少しその流れに乗っていきます。最初に、「スポーツ心理学ハンドブック (上田雅夫 実務教育出版)」から、一つ題材を紹介します。これはもともとオーストラリアのスポーツ心理学のワークショップで使われたものとのことです。原文を手に入れようと問い合わせたのですが、ちょっと難しそうなので訳文をちょっと要約してみたいと思います。
「The mature professional athlete」
スポーツにおいて成功を収めることは、人生において他の事柄で成功を収めることと極めてよく似ています。成功を収める人は「成熟」と呼ばれる態度を持っています。普通は年齢とともに、経験を積んで、成熟度は増していきますが、必ずしも経験=精神的な成熟とは限りません。最初のステップは「成熟」がどれだけ重大な意味を持つかを理解することです。成熟した人間が持つ態度や行動は、スポーツに限らず、人生のあらゆる場面で活かすことが出来るはずです。その成熟した人間が持っている特徴とは次のようなものです。
1. 責任
成熟したアスリートは、彼ら自身が意思決定の際に「選択権」を持っているということを認識しています。意思決定を他人に任せてしまったり、他人のサポートに依存しすぎてしまっている人は、もし自分の望んでいない結果が出てしまった時に、他人の責任にしがちです。成熟したアスリートは、自分で意思決定を行い、目標を設定し、目標達成に向けて努力をし、そして次の目標へのモチベーションを高めていきます。つまり、自分の人生を自分でコントロールしているのです。もちろん、彼らも他人から学ぼうという姿勢は持っていますが、最終決定は彼ら自身で下すのです。
次に、成熟したアスリートは自分自身の強みと弱みについて責任を持っています。自分の強みと弱みを受け入れて、弱点を克服し、強みをさらに伸ばすべく努力を続けることです。彼らは自分で超えられる限界と、そうでない限界を区別しています。
2. 気づきと受諾
自分の強みと弱みを受け入れるためには、まず自分自身を冷静に観察することが必要です。成熟したアスリートは自分自身を良く理解しています。世の中の人間は十人十色で、ものの見方は人それぞれです。自分自身を知るためには、まず自分がどのように物事を見ているのか、どのように認識しているのかを理解する必要があります。そして、それは他人とは異なる、自分自身の物の見方だということを受け入れる必要があります。成熟したアスリートは自分を他人に似せたいとは思わないし、自分を他人と比較するようなことに時間を浪費しません。彼らは自分自身をありのままに受け入れ、自分自身の能力を最大限まで高めるよう努力します。
3. 現実性と合理性
自分自身を受け入れるためには、現実的に、客観的に、そして合理的に自分自身を、または自分の周りのことを見つめる必要があります。短期間の目標設定を行い、自分のパフォーマンスと比較できる基準を持つと、より現実との対比が出来るようになります。よりよいパフォーマンスをもたらす要因をリストアップしておくのもいい方法です。こうしたことによって、自分のパフォーマンスを客観的、現実的に評価することが出来ます。
また「成熟」さを表すものに、合理的な物の考え方を挙げることが出来ます。合理的な物の考え方とは、現実的で肯定的に物事をとらえ、自分の目標に向かって邁進する役割を果たします。それはプレッシャーのかかる場面でも、自分の気持ちのバランスを保つのに役立ちます。合理的な信念の例としては、「自分の能力を最大限発揮するために頑張ろう」などが挙げられます。
一方、非合理的な物の考え方は、否定的で、目標に向かう行動を阻害します。それは、例えば「完璧でありたい」というようなものです。アスリートとして可能な限り自分を高めることは重要なことですが、完璧でいるということは果たして可能でしょうか?このようなアプローチは、自分をただプレッシャーの中に放り込んでしまうだけです。このような、否定的で、非生産的で、挫折の危険性を伴う非合理的な考え方を自分自身で見つけ出し、それらを自分で合理的で生産的な考え方に置き換えられるようにしましょう。
4. 自己管理
1日の中で、アスリートはトレーニング、仕事、家庭など多くのことに時間を割かなければいけません。これらのことをうまく処理するためには、時間やエネルギーの配分をうまく割り振る必要があります。そのためには、計画を立て、優先順位を決め、その計画を実行に移します。そして、1日の終わりに、それらがうまく行われたかどうかを確認しましょう。若いうちは家族や周りの大人が、いろいろと助けてくれたかもしれませんが、もし自分が成功したいと思うのであれば、自分自身で目標を定め、優先順位を決め、実行する癖をつけなければいけません。
5. 粘り、忍耐
成功への道は長く、険しく、そして多くの障害が立ちはだかります。それはケガであったり、スランプであったり、グランド外で起こることかもしれません。いつもコンスタントに進歩できるとは限りません。物事が前進することもあれば、後退することもあるでしょう。成功を収めるアスリートは、この後退現象は自分の努力や周りのサポートを得て、克服可能であることを学んでいます。例えば、今まで立ち向かってきた自分のパフォーマンスに障害となる物、そしてそれらをうまく処理したことをリストアップしてみましょう。このアプローチは自分が後退現象をうまく処理する能力があること、改善する方法を知っているということを気がつかせてくれるでしょう。
さて、以上ざっとまとめてみましたが、どうだったでしょうか?「成熟」とか言われるとあまりピンと来ない人もいるかもしれませんが、前回のディスカッションでちらほら出てきた「人間的成長」とか、「心を磨く」といった、割と広く捉えられがちな表現も今回の5項目で少し具体的に見えてきた人もいるのではないでしょうか。自分としては自己認識、自己責任、自己管理あたりがキーワードになってくる気がします。もちろんどれが正しくて、どれが正しくないという部類の議論ではありません。みなさんが各々の価値観、人生観に基づいて、「人間的成長」に必要なものは何かっていうことを考えていただければいいと思います。さて、みなさんはパフォーマンスの向上につながる人間的成長とか成熟と聞いて、どんな性質、行動、態度を思い浮かべますか?
「The mature professional athlete」
スポーツにおいて成功を収めることは、人生において他の事柄で成功を収めることと極めてよく似ています。成功を収める人は「成熟」と呼ばれる態度を持っています。普通は年齢とともに、経験を積んで、成熟度は増していきますが、必ずしも経験=精神的な成熟とは限りません。最初のステップは「成熟」がどれだけ重大な意味を持つかを理解することです。成熟した人間が持つ態度や行動は、スポーツに限らず、人生のあらゆる場面で活かすことが出来るはずです。その成熟した人間が持っている特徴とは次のようなものです。
1. 責任
成熟したアスリートは、彼ら自身が意思決定の際に「選択権」を持っているということを認識しています。意思決定を他人に任せてしまったり、他人のサポートに依存しすぎてしまっている人は、もし自分の望んでいない結果が出てしまった時に、他人の責任にしがちです。成熟したアスリートは、自分で意思決定を行い、目標を設定し、目標達成に向けて努力をし、そして次の目標へのモチベーションを高めていきます。つまり、自分の人生を自分でコントロールしているのです。もちろん、彼らも他人から学ぼうという姿勢は持っていますが、最終決定は彼ら自身で下すのです。
次に、成熟したアスリートは自分自身の強みと弱みについて責任を持っています。自分の強みと弱みを受け入れて、弱点を克服し、強みをさらに伸ばすべく努力を続けることです。彼らは自分で超えられる限界と、そうでない限界を区別しています。
2. 気づきと受諾
自分の強みと弱みを受け入れるためには、まず自分自身を冷静に観察することが必要です。成熟したアスリートは自分自身を良く理解しています。世の中の人間は十人十色で、ものの見方は人それぞれです。自分自身を知るためには、まず自分がどのように物事を見ているのか、どのように認識しているのかを理解する必要があります。そして、それは他人とは異なる、自分自身の物の見方だということを受け入れる必要があります。成熟したアスリートは自分を他人に似せたいとは思わないし、自分を他人と比較するようなことに時間を浪費しません。彼らは自分自身をありのままに受け入れ、自分自身の能力を最大限まで高めるよう努力します。
3. 現実性と合理性
自分自身を受け入れるためには、現実的に、客観的に、そして合理的に自分自身を、または自分の周りのことを見つめる必要があります。短期間の目標設定を行い、自分のパフォーマンスと比較できる基準を持つと、より現実との対比が出来るようになります。よりよいパフォーマンスをもたらす要因をリストアップしておくのもいい方法です。こうしたことによって、自分のパフォーマンスを客観的、現実的に評価することが出来ます。
また「成熟」さを表すものに、合理的な物の考え方を挙げることが出来ます。合理的な物の考え方とは、現実的で肯定的に物事をとらえ、自分の目標に向かって邁進する役割を果たします。それはプレッシャーのかかる場面でも、自分の気持ちのバランスを保つのに役立ちます。合理的な信念の例としては、「自分の能力を最大限発揮するために頑張ろう」などが挙げられます。
一方、非合理的な物の考え方は、否定的で、目標に向かう行動を阻害します。それは、例えば「完璧でありたい」というようなものです。アスリートとして可能な限り自分を高めることは重要なことですが、完璧でいるということは果たして可能でしょうか?このようなアプローチは、自分をただプレッシャーの中に放り込んでしまうだけです。このような、否定的で、非生産的で、挫折の危険性を伴う非合理的な考え方を自分自身で見つけ出し、それらを自分で合理的で生産的な考え方に置き換えられるようにしましょう。
4. 自己管理
1日の中で、アスリートはトレーニング、仕事、家庭など多くのことに時間を割かなければいけません。これらのことをうまく処理するためには、時間やエネルギーの配分をうまく割り振る必要があります。そのためには、計画を立て、優先順位を決め、その計画を実行に移します。そして、1日の終わりに、それらがうまく行われたかどうかを確認しましょう。若いうちは家族や周りの大人が、いろいろと助けてくれたかもしれませんが、もし自分が成功したいと思うのであれば、自分自身で目標を定め、優先順位を決め、実行する癖をつけなければいけません。
5. 粘り、忍耐
成功への道は長く、険しく、そして多くの障害が立ちはだかります。それはケガであったり、スランプであったり、グランド外で起こることかもしれません。いつもコンスタントに進歩できるとは限りません。物事が前進することもあれば、後退することもあるでしょう。成功を収めるアスリートは、この後退現象は自分の努力や周りのサポートを得て、克服可能であることを学んでいます。例えば、今まで立ち向かってきた自分のパフォーマンスに障害となる物、そしてそれらをうまく処理したことをリストアップしてみましょう。このアプローチは自分が後退現象をうまく処理する能力があること、改善する方法を知っているということを気がつかせてくれるでしょう。
さて、以上ざっとまとめてみましたが、どうだったでしょうか?「成熟」とか言われるとあまりピンと来ない人もいるかもしれませんが、前回のディスカッションでちらほら出てきた「人間的成長」とか、「心を磨く」といった、割と広く捉えられがちな表現も今回の5項目で少し具体的に見えてきた人もいるのではないでしょうか。自分としては自己認識、自己責任、自己管理あたりがキーワードになってくる気がします。もちろんどれが正しくて、どれが正しくないという部類の議論ではありません。みなさんが各々の価値観、人生観に基づいて、「人間的成長」に必要なものは何かっていうことを考えていただければいいと思います。さて、みなさんはパフォーマンスの向上につながる人間的成長とか成熟と聞いて、どんな性質、行動、態度を思い浮かべますか?
Tuesday, July 04, 2006
NAKATA
今回はスポーツ心理学には直接関係ないけど、皆さんご存知の通り、サッカー日本代表の中田英寿選手が引退を表明したということで、そのことについて書いてみたい。
29歳という若さでの引退について、本人はそのことについてHPでは直接触れていないが、周囲から「早すぎる」という声が出ているとともに、「彼らしい引き際」というコメントもちらほら見る。実際自分は早いとも遅いとも思わず、ただ「彼らしいな」思ったが、同じような印象を持った人も多いのではないか。彼の持つ印象と言えば、サッカーでは世界で通用するレベルを持ちながら、それは彼の人生の一部であって、本人は一生何らかの形でサッカーに関わっていくにせよ、サッカーだけで人生を終えるつもりはない。HPをのぞいてみても、そのデザインはオシャレだし、日記からも、彼の興味がファッション、インテリア、音楽など多岐に渡り、サッカー以外の活動を見てみても、ビジネス、語学習得、異文化への関心など様々なことに対して意欲的に自分のアンテナをのばしていることが伝わってくる。
自分は正直に言うと、日常的にサッカーを見ているサッカーファンではなかったんだけど(1998年以来、W杯の後にはいつも、「これからはサッカーを見続けよう」と思うんだけど)、中田選手のことは何となくいつも気になっていた。きっかけは、かれこれ4、5年前だと思うが、「ZONE」という日本のテレビ番組からだったと思う。そこに出てきた高校時代の中田選手は、初々しさこそあったもののテレビの前で堂々と「ヨーロッパでサッカーをやりたい」という自らのビジョンを語っていた(「治安がいいところがいいです」って付け加えていたのが何ともかわいらしかった)。そして、若くして代表に入った彼が、カズを相手にも堂々と自分の意志を見せてた姿がとても印象的だった(確か映像は中田が蹴るはずのFKをカズが蹴ると言い出したことに対して、怒りを表していたシーンだったと思う)。高校時代から自分の理想とするプレーがあって、目先の勝ち負けよりも、チームとして理想の形を求めることを優先させていたというような印象があった。その後、海外でプレーをするという本人のビジョン通り、彼は若くしてイタリアに渡る。海外でプレーする最初の日本人ではなかったけれど、その後多くの選手が、彼に続いて海を渡ることを夢見ることが出来るようになったという点では、野球界で言えば野茂選手の功績に似ているし、2人とも「先駆者」という表現がふさわしいと思う。
そして、これは自分個人の印象だが、野茂選手にしても中田選手にしても、「先駆者」である彼らは、その後に続く選手に比べて、実力うんぬんという以外に、明らかに「何か」が違うような気がする。野球界もサッカー界も、近年では続々と選手が海外に出て行く傾向にある。だけど、選手としての成果、実力以外の部分で、オーラ、誇り、貫禄、意志、プライド、存在そのもの、が他の日本人選手からは見えてこない「何か」を持っている気がする。そして、彼らの共通するところは、自分が日本を離れてからも、自身が巣立ってきた日本への思いを持ち続けていること(自分の経験からいうと、日本を離れたからこそ持っているのかもしれないが)。野茂選手は自身でクラブチームを設立しているし、アメリカの独立リーグのチームに日本との架け橋になるよう投資した。中田選手も自身がいたチームをサポートしている。つまり、彼らはマスコミを前に饒舌に口を開くことはないが、時に孤高などと言われる彼らがグランドの外で、他のアスリートや将来の若者達のために一肌脱いでいる。
スポーツ心理学を勉強して以来、人間的成長がスポーツの成功には不可欠だという思いが強まっている。「スポーツにおける成功」とはこれまた定義が難しいが、自分にとっては少なくとも一時の活躍を指しているものではない。スポーツは、特にプロスポーツの世界は記録やパフォーマンスの結果を通じて勝ち負けを争うもので、我々は、ついついその記録や結果の優劣についてのみ注目してしまいがちだ。しかし、人間が関わっているこのスポーツのパフォーマンスには必ずその人間の持っている性格、意志、信念、価値観が現れてくるのである。「スポーツにおける成功」とはおそらく相手に勝つこと、記録を出すことだけではないんだと思う。自己の信念を全うし、意志を貫き通し、パフォーマンスを通じて自己を、自己の価値観を表現しきれた者が「成功」を実感できるのだと思う。
「意志あるところに道は開ける」
自分が好きな言葉の一つである。彼らは自分自身の道を切り開いていくことによって、多くの、後に続くアスリート達に道を残してくれた。彼らが常に自分の意志を持っている限り、今後も自分自身の道を切り開いていけることだろう。たとえ、競技の一線から退いたとしても。自分はそういうチャレンジ精神、勇気、意志、プライド、誇りを得ることが、また「スポーツにおける成功」だと思っている。
自分は今でも野茂選手のおかげで自分がアメリカ野球に興味を持てて、そして現在に至っていることに感謝している。中田選手にも、野球ほどではなかったが、サッカー、そしてHPなどを通じて彼の価値観に触れることが出来たことに感謝している。そして、もちろん彼らとは全く異なるものだが、自分で自分の道を切り開くという意志を持つことが出来たことも、少なからず彼らからの影響もあったのではないかとさえ思っている。
「スポーツにおける成功」とはアスリートそれぞれの主観によるところであり、周りにいる我々もまた、自分たちの主観によって、アスリートの成功うんぬんを好き勝手に議論するものである。だけど、彼らはプロのサッカー、野球の世界において記録、実績においては文句なく成功を収めたアスリートであり、それは彼らの持つ才能や肉体的なもののみならず、人間的な部分が大きく関わっているように思えてならない。そして彼ら自身が、彼らのプロスポーツ人生を「成功」と思えるよう心から願っている。
中田選手の引退を惜しむ気持ちと同時に、次はどんなことをしてくれるんだろうか、という期待がすぐに自分の中から出てくることもまた事実である。プレーのみならず、引き際でも、また我々に考えさせてくれるきっかけを与えてくれた彼の存在の大きさを改めて認識した。そして、セカンドライフでもまた我々に。。。と期待してしまう。
29歳という若さでの引退について、本人はそのことについてHPでは直接触れていないが、周囲から「早すぎる」という声が出ているとともに、「彼らしい引き際」というコメントもちらほら見る。実際自分は早いとも遅いとも思わず、ただ「彼らしいな」思ったが、同じような印象を持った人も多いのではないか。彼の持つ印象と言えば、サッカーでは世界で通用するレベルを持ちながら、それは彼の人生の一部であって、本人は一生何らかの形でサッカーに関わっていくにせよ、サッカーだけで人生を終えるつもりはない。HPをのぞいてみても、そのデザインはオシャレだし、日記からも、彼の興味がファッション、インテリア、音楽など多岐に渡り、サッカー以外の活動を見てみても、ビジネス、語学習得、異文化への関心など様々なことに対して意欲的に自分のアンテナをのばしていることが伝わってくる。
自分は正直に言うと、日常的にサッカーを見ているサッカーファンではなかったんだけど(1998年以来、W杯の後にはいつも、「これからはサッカーを見続けよう」と思うんだけど)、中田選手のことは何となくいつも気になっていた。きっかけは、かれこれ4、5年前だと思うが、「ZONE」という日本のテレビ番組からだったと思う。そこに出てきた高校時代の中田選手は、初々しさこそあったもののテレビの前で堂々と「ヨーロッパでサッカーをやりたい」という自らのビジョンを語っていた(「治安がいいところがいいです」って付け加えていたのが何ともかわいらしかった)。そして、若くして代表に入った彼が、カズを相手にも堂々と自分の意志を見せてた姿がとても印象的だった(確か映像は中田が蹴るはずのFKをカズが蹴ると言い出したことに対して、怒りを表していたシーンだったと思う)。高校時代から自分の理想とするプレーがあって、目先の勝ち負けよりも、チームとして理想の形を求めることを優先させていたというような印象があった。その後、海外でプレーをするという本人のビジョン通り、彼は若くしてイタリアに渡る。海外でプレーする最初の日本人ではなかったけれど、その後多くの選手が、彼に続いて海を渡ることを夢見ることが出来るようになったという点では、野球界で言えば野茂選手の功績に似ているし、2人とも「先駆者」という表現がふさわしいと思う。
そして、これは自分個人の印象だが、野茂選手にしても中田選手にしても、「先駆者」である彼らは、その後に続く選手に比べて、実力うんぬんという以外に、明らかに「何か」が違うような気がする。野球界もサッカー界も、近年では続々と選手が海外に出て行く傾向にある。だけど、選手としての成果、実力以外の部分で、オーラ、誇り、貫禄、意志、プライド、存在そのもの、が他の日本人選手からは見えてこない「何か」を持っている気がする。そして、彼らの共通するところは、自分が日本を離れてからも、自身が巣立ってきた日本への思いを持ち続けていること(自分の経験からいうと、日本を離れたからこそ持っているのかもしれないが)。野茂選手は自身でクラブチームを設立しているし、アメリカの独立リーグのチームに日本との架け橋になるよう投資した。中田選手も自身がいたチームをサポートしている。つまり、彼らはマスコミを前に饒舌に口を開くことはないが、時に孤高などと言われる彼らがグランドの外で、他のアスリートや将来の若者達のために一肌脱いでいる。
スポーツ心理学を勉強して以来、人間的成長がスポーツの成功には不可欠だという思いが強まっている。「スポーツにおける成功」とはこれまた定義が難しいが、自分にとっては少なくとも一時の活躍を指しているものではない。スポーツは、特にプロスポーツの世界は記録やパフォーマンスの結果を通じて勝ち負けを争うもので、我々は、ついついその記録や結果の優劣についてのみ注目してしまいがちだ。しかし、人間が関わっているこのスポーツのパフォーマンスには必ずその人間の持っている性格、意志、信念、価値観が現れてくるのである。「スポーツにおける成功」とはおそらく相手に勝つこと、記録を出すことだけではないんだと思う。自己の信念を全うし、意志を貫き通し、パフォーマンスを通じて自己を、自己の価値観を表現しきれた者が「成功」を実感できるのだと思う。
「意志あるところに道は開ける」
自分が好きな言葉の一つである。彼らは自分自身の道を切り開いていくことによって、多くの、後に続くアスリート達に道を残してくれた。彼らが常に自分の意志を持っている限り、今後も自分自身の道を切り開いていけることだろう。たとえ、競技の一線から退いたとしても。自分はそういうチャレンジ精神、勇気、意志、プライド、誇りを得ることが、また「スポーツにおける成功」だと思っている。
自分は今でも野茂選手のおかげで自分がアメリカ野球に興味を持てて、そして現在に至っていることに感謝している。中田選手にも、野球ほどではなかったが、サッカー、そしてHPなどを通じて彼の価値観に触れることが出来たことに感謝している。そして、もちろん彼らとは全く異なるものだが、自分で自分の道を切り開くという意志を持つことが出来たことも、少なからず彼らからの影響もあったのではないかとさえ思っている。
「スポーツにおける成功」とはアスリートそれぞれの主観によるところであり、周りにいる我々もまた、自分たちの主観によって、アスリートの成功うんぬんを好き勝手に議論するものである。だけど、彼らはプロのサッカー、野球の世界において記録、実績においては文句なく成功を収めたアスリートであり、それは彼らの持つ才能や肉体的なもののみならず、人間的な部分が大きく関わっているように思えてならない。そして彼ら自身が、彼らのプロスポーツ人生を「成功」と思えるよう心から願っている。
中田選手の引退を惜しむ気持ちと同時に、次はどんなことをしてくれるんだろうか、という期待がすぐに自分の中から出てくることもまた事実である。プレーのみならず、引き際でも、また我々に考えさせてくれるきっかけを与えてくれた彼の存在の大きさを改めて認識した。そして、セカンドライフでもまた我々に。。。と期待してしまう。
Sunday, June 25, 2006
メンタルは万能か?
メンタルの重要性について書くはずのブログにのっけから懐疑的なタイトルで恐縮だが、少し考えてみてほしい。例えばスポーツで、相手とパフォーマンスを競う場面で、メンタルは大切なのはもちろんだが、勝負の結果は全てメンタルに起因するのか?「メンタルの差が出ました」とか「メンタルの弱さが原因です」というのは、敗者の弁としてよく耳にするフレーズである。では、果たして本当にそのコメントは的を得ているのか?
次に、以下の問いについて考えてみてほしい。「マイケルジョーダンはなぜメジャーリーガーになれなかったのか?」この問いに対して、彼は競争の激しいマイナーリーグを勝ち抜くだけの精神力がなかった、というのは適切な答えだろうか?間違いではないかもしれない。バスケットでは数々の場面で、強靭な精神力を見せた彼も野球においては、その精神力を発揮出来なかったという答えもある意味成り立つかもしれない。フィジカル面でも、パワーについては、野球選手としてどの程度だったかはよくわからないが、彼の運動能力は申し分なかったであろう。では、一番の原因は?それは、野球の技術が不十分だったから、であろう。まあ、彼は1シーズンしかプロ野球生活を送っていないので、結論を出すには無理がある議論ではあるのだが。
ここで自分が好きな著書の一つである「新インナーゲーム」(日刊スポーツ出版社)からプロゴルファーの青木功さんのコメントを引用したい。
『ゴルフはメンタルなスポーツだと言うが、賛成できかねる部分もある。だいたい、「心技体」というのは、自分は嘘だと思う。「イメージトレーニングのおかげで勝てました」などと発言する若手に限って、次の週からは元の木阿弥になることが多い。大事なのは、やっぱり体だ。重要な順番から言えば、「体技心」ではないかと思う。』
このコメントは誰もが抱いているゴルフというスポーツについてのイメージを覆すものかもしれないが、彼が言わんとしていることは、本当にプロゴルファーとして生き抜くためには、技術を身につけるのはもちろんのことだが、プロゴルファーはそれを1試合だけ出せばいいというものではなく、1年を通じて、しかもそれを毎シーズン出し続けなければいけない。安定して自分の技術を発揮するためには、それだけの反復練習をしなければいけないし、シーズン中のコンディションも整えなければいけない、ということから肉体的な強さが最初に来るべきだ、ということではないだろうか。
つまり先ほどのジョーダンの例や青木選手のコメントから言えるのは、パフォーマンスを競う場面において、メンタルが勝負を分けるというのは、あくまで技術や体力が互角である、または差があるとしても太刀打ちできるほどの差であるという場面においてだということである。そういった意味では、ごく最近の例を持ち出すとすれば、サッカー日本代表のワールドカップでの結果は、メンタルが原因とは言い切れないと思う。もちろん本来の実力を出し切れなかったことはメンタルに起因するものだとも言えなくはないけれど、日本代表の3試合と、他国の試合をざっと見比べた場合、90分間の運動量や、ボールのキープ力、パスの精度、などなどが決勝トーナメントに出るチームからは見劣りしてたのではないかと感じた(これに関してはサッカーに詳しい人からのコメントが欲しいところです)。
続いては、トリノオリンピックからスピードスケートの岡崎朋美選手の例。彼女は500Mで銅メダルに0.05秒足りずに4位に終わっている(500Mは2回のレースのタイムの合計で争われる)。これに対しての彼女のコメントが『1本目で4位の任慧のタイムを引き離した3位だったので、ちょっと守りに入っちゃったのかもしれない』『2本目で前の組に滑った任慧が38秒27を出しその時点でトップに躍り出たので意識してしまった』『2本目の最終コーナーの出口で、インコースを走っていた李が視界に入った瞬間にタイムを計算し「やばい、抜かれるかも」と思ったら焦りが出た。膝が立ってしまい、気持ちだけ先に行ってしまったんです』(Number 648)。これらのコメントから彼女の場合、0.05秒の明暗を分けたのはメンタルの差だったと言えるかもしれない。
さて、話を戻すと、パフォーマンスの出来不出来を競う勝負のかかった場面では、結果に対して選手や監督はおそらく一番インパクトのあった要素を持ち出してそれが勝因である、敗因であると言うものであろう。しかし実際は、パフォーマンスにおいては、心技体は常に切り離せないものである。「メンタルの強さ」(これに対する定義も人それぞれだと思うが)というのは勝負を分ける大切な要素であることは間違いないが、あくまで要素のひとつである。もちろん勝負のレベルによってメンタルが占める比重というのは変わってくるわけだが、自分のパフォーマンスを振り返る時は常にメンタルと同様に、フィジカル、技術も当然ながら、慎重に分析する必要がある。
次に、以下の問いについて考えてみてほしい。「マイケルジョーダンはなぜメジャーリーガーになれなかったのか?」この問いに対して、彼は競争の激しいマイナーリーグを勝ち抜くだけの精神力がなかった、というのは適切な答えだろうか?間違いではないかもしれない。バスケットでは数々の場面で、強靭な精神力を見せた彼も野球においては、その精神力を発揮出来なかったという答えもある意味成り立つかもしれない。フィジカル面でも、パワーについては、野球選手としてどの程度だったかはよくわからないが、彼の運動能力は申し分なかったであろう。では、一番の原因は?それは、野球の技術が不十分だったから、であろう。まあ、彼は1シーズンしかプロ野球生活を送っていないので、結論を出すには無理がある議論ではあるのだが。
ここで自分が好きな著書の一つである「新インナーゲーム」(日刊スポーツ出版社)からプロゴルファーの青木功さんのコメントを引用したい。
『ゴルフはメンタルなスポーツだと言うが、賛成できかねる部分もある。だいたい、「心技体」というのは、自分は嘘だと思う。「イメージトレーニングのおかげで勝てました」などと発言する若手に限って、次の週からは元の木阿弥になることが多い。大事なのは、やっぱり体だ。重要な順番から言えば、「体技心」ではないかと思う。』
このコメントは誰もが抱いているゴルフというスポーツについてのイメージを覆すものかもしれないが、彼が言わんとしていることは、本当にプロゴルファーとして生き抜くためには、技術を身につけるのはもちろんのことだが、プロゴルファーはそれを1試合だけ出せばいいというものではなく、1年を通じて、しかもそれを毎シーズン出し続けなければいけない。安定して自分の技術を発揮するためには、それだけの反復練習をしなければいけないし、シーズン中のコンディションも整えなければいけない、ということから肉体的な強さが最初に来るべきだ、ということではないだろうか。
つまり先ほどのジョーダンの例や青木選手のコメントから言えるのは、パフォーマンスを競う場面において、メンタルが勝負を分けるというのは、あくまで技術や体力が互角である、または差があるとしても太刀打ちできるほどの差であるという場面においてだということである。そういった意味では、ごく最近の例を持ち出すとすれば、サッカー日本代表のワールドカップでの結果は、メンタルが原因とは言い切れないと思う。もちろん本来の実力を出し切れなかったことはメンタルに起因するものだとも言えなくはないけれど、日本代表の3試合と、他国の試合をざっと見比べた場合、90分間の運動量や、ボールのキープ力、パスの精度、などなどが決勝トーナメントに出るチームからは見劣りしてたのではないかと感じた(これに関してはサッカーに詳しい人からのコメントが欲しいところです)。
続いては、トリノオリンピックからスピードスケートの岡崎朋美選手の例。彼女は500Mで銅メダルに0.05秒足りずに4位に終わっている(500Mは2回のレースのタイムの合計で争われる)。これに対しての彼女のコメントが『1本目で4位の任慧のタイムを引き離した3位だったので、ちょっと守りに入っちゃったのかもしれない』『2本目で前の組に滑った任慧が38秒27を出しその時点でトップに躍り出たので意識してしまった』『2本目の最終コーナーの出口で、インコースを走っていた李が視界に入った瞬間にタイムを計算し「やばい、抜かれるかも」と思ったら焦りが出た。膝が立ってしまい、気持ちだけ先に行ってしまったんです』(Number 648)。これらのコメントから彼女の場合、0.05秒の明暗を分けたのはメンタルの差だったと言えるかもしれない。
さて、話を戻すと、パフォーマンスの出来不出来を競う勝負のかかった場面では、結果に対して選手や監督はおそらく一番インパクトのあった要素を持ち出してそれが勝因である、敗因であると言うものであろう。しかし実際は、パフォーマンスにおいては、心技体は常に切り離せないものである。「メンタルの強さ」(これに対する定義も人それぞれだと思うが)というのは勝負を分ける大切な要素であることは間違いないが、あくまで要素のひとつである。もちろん勝負のレベルによってメンタルが占める比重というのは変わってくるわけだが、自分のパフォーマンスを振り返る時は常にメンタルと同様に、フィジカル、技術も当然ながら、慎重に分析する必要がある。
Saturday, June 24, 2006
プロローグ
ブログ始めました。
何事もまずは経験。
スポーツ心理学を勉強し始めてから早3年が経とうとしています。
さて、今後も一生続けるであろうこの道について、これまで何を学んできて、それをどうやって人に伝えていって、さらにこれから何を学んでいくべきなのか、そんなことを自分自身問い続けながらやっていきたい、そんな思いからこのブログを始めました。なので、このブログは多くの人の参加を歓迎します。
知識は、身につけるだけでは半人前。それをより多くの人に伝えられるようになってこそ一人前だと思っています。学びながら教え、教えながら学ぶ。それが常に自分が心掛けていることです。
「メンタルが強いとはどういうことなのか?」「メンタルは本当に強くなるのか?」「そもそもメンタルとは何なのか?」メンタルに関する興味や疑問は尽きません。この、目に見えない、とらえどころのないものを考えていくことは時には難しく、時には人にフラストレーションを与える物かもしれません。「どうしたら自分はもっとタフになれるのか?」「どうしたら選手のモチベーションを上げられるのか?」などなど。でも、目に見えない、終わりのないものだからこそ、メンタルを追求することは魅力があって止められないものなんだと思います。
成功は、成功するまで挑戦を止めない人に訪れるものだと思います。メンタルの追求も奥が深いものです。でも、心の充実がもたらすものは、他のどんなものよりきっと魅力のあるものでしょう。
ま、おいおい話していきましょう。
貴
何事もまずは経験。
スポーツ心理学を勉強し始めてから早3年が経とうとしています。
さて、今後も一生続けるであろうこの道について、これまで何を学んできて、それをどうやって人に伝えていって、さらにこれから何を学んでいくべきなのか、そんなことを自分自身問い続けながらやっていきたい、そんな思いからこのブログを始めました。なので、このブログは多くの人の参加を歓迎します。
知識は、身につけるだけでは半人前。それをより多くの人に伝えられるようになってこそ一人前だと思っています。学びながら教え、教えながら学ぶ。それが常に自分が心掛けていることです。
「メンタルが強いとはどういうことなのか?」「メンタルは本当に強くなるのか?」「そもそもメンタルとは何なのか?」メンタルに関する興味や疑問は尽きません。この、目に見えない、とらえどころのないものを考えていくことは時には難しく、時には人にフラストレーションを与える物かもしれません。「どうしたら自分はもっとタフになれるのか?」「どうしたら選手のモチベーションを上げられるのか?」などなど。でも、目に見えない、終わりのないものだからこそ、メンタルを追求することは魅力があって止められないものなんだと思います。
成功は、成功するまで挑戦を止めない人に訪れるものだと思います。メンタルの追求も奥が深いものです。でも、心の充実がもたらすものは、他のどんなものよりきっと魅力のあるものでしょう。
ま、おいおい話していきましょう。
貴
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